Research Abstract |
外部性や不確実性がない場合には,市場は機能する,というのが20世紀後半から現在に至るまで研究者の間で共有されている知識である.ところが,「市場」そのものが市場の参加者に共有されている一種の「公共財」である.このような制度がどのように出現してきたのか,どのような環境ならば維持されるのか,などに関する市場の根源そのものを問うのが市場班の基礎研究である.市場の起源を問う研究の背後には公共財そのものの供給にかかわる理論と実験研究が必要となる. 市場が機能するとはいうものの,金融市場における不安定性,非効率性,実物市場における投資などの不確実性,公共調達のように少数者が競う入札などでは,市場がほんとうに機能するのかどうは定かでない.これらの分野では,理論が未発達であると共に,たどえ理論があっても理論通りに機能するのかどうかが不明であるのが現状である. 実際の金融市場ではバブルが起こることが観察されているが,バブルに関しては実験研究者の間で合意はない.金融市場における解消しがたい不確実性がバブルの根本的な要因になっている,とする研究が存在するものの,ほんとうのところは何か,はまだ見えていない.一方,実物市場における投資の役割に関しては,例外的に,大阪大学における一連の温室効果ガス排出権取引実験があるものの,投資の投資たるゆえんをきちんと織り込めてはいない.少数者の競争であるオークション(入札)においても,理論どおり機、能するようなケースは稀である. さらには,複数単位の同一財や複数財の同時取引に関する研究は未だ未開発である.一方,相手を出し抜くというスパイト行為が実験結果に重要な影響を与えることを明らかにしているものの研究は途上である.
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