Research Abstract |
本年度は, ハーフメタル系ホイスラー合金の一つであるCo2MnSi(CMS) を下部・上部両電極に用いた, エピタキシャルCMS/MgO/CMS強磁性トンネル接合(CMS-MTJ) におけるトンネル機構と電子構造を, トンネルスペクトロスコピーにより調べ, 以下の知見を得た. なお, CMS-MTJについては, 既に昨年度,室温で179%(4.2Kで683%) の高いTMR比を実証したものである. (1) 磁化反平行(AP) および磁化平行(P) に対する比較的広い電圧領域でのdI/dV vs V特性より, CMSが明瞭なハーフメタルギャップ(HMG) を有し, フェルミレベルがHMGのほぼ中間に位置すること. (2) APに対するV〜±4mVでのd^2I/dV^2 vs. V特性におけるピークの存在より, CMS-MTJにおいて, 界面準位へのトンネルと,コレクタ電極でのホットエレクトロンによるマグノン励起を介したスピンフリップ過程が重要な役割を果たしていること. (3) Pに対する7〜0近傍でのVの正負に対するd^2I/dV^2 vs. V特性の非対称性より, a) 下部CMS電極は界面準位を有するものの, バルク領域ではHMG中の残留電子状態は無祖できるほど小さいのに対して, b) 上部CMS電極はバルク領域において, HMG中のフェルミレベル近傍にわずかな残留電子状態密度を有すること. 以上, ハーフメタル系Co_2MnSiとMgOバリアを用いたMTJのトンネル機構において, 界面状態と, バイアス印加によるホットエレクトロンが重要な役割を果たしていることを明らかにした.
|