2009 Fiscal Year Annual Research Report
スピン軌道相互作用を用いたスピン流の電気的な検出と制御
Project Area | Creation and control of spin current |
Project/Area Number |
19048005
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
新田 淳作 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 教授 (00393778)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
好田 誠 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (00420000)
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Keywords | スピン流 / スピン緩和 / スピン軌道相互作用 / 永久スピン旋回状態 / 弱反局在 |
Research Abstract |
InGaAs/InAlAsヘテロ構造を用いた二次元電子ガスはRashbaのスピン軌道相互作用が重要であることが知られている。このスピン軌道相互作用によって生じる有効磁場は電子スピンの運動する方向に依存するため電子散乱により有効磁場の向きが変化しスピン緩和をもたらす。スピン軌道相互作用の電界制御性を保ちつつスピン緩和を抑制することがスピン流の生成・制御さらにスピントロニクスデバイスの実現にとって重要な課題となる。そこで、電子の運動方向をそろえるため幅1μm以下の細線構造を作製し、弱反局在の解析によりスピン緩和時間を評価した結果、1桁近く長くなることを確認した。また、細線上に形成したゲート電界によりスピン緩和時間が大幅に増加することがわかった。この結果は、Rashbaスピン軌道相互作用αがDresselhausスピン軌道相互作用βに近づくことによって説明できる。また、細線の結晶方位によってスピン緩和長が大きく異なることを見いだした。 以上の実験は、起源の異なる2つのスピン軌道相互作用の強さを定量的に評価することがスピン緩和の抑制に不可欠であることを示唆している。Rashbaスピン軌道相互作用αとDresselhausスピン軌道相互作用βが等しくなるとスピン軌道相互作用の作る有効磁場の向きが一軸性となりスピンは良い保存量となる。この永久スピン旋回状態では散乱を受けてもスピンの歳差運動は乱されず、スピンのコヒーレンスが保たれた状態が実現する。そのためには、Rashbaスピン軌道相互作用αとDresselhausスピン軌道相互作用βを実験的に評価することが不可欠である。我々は、細線構造のスピン軌道相互作用とゼーマン効果を組み合わせることにより、2つのスピン軌道相互作用の強度比を伝導実験から求める手法を新たに提案した。さらに、細線に印加する面内磁場の角度に依存した弱反局在が大きな異方性を示すことを確認し、本提案の有効性を実験的に確認した。
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