2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Creation and control of spin current |
Project/Area Number |
19048011
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
黒田 眞司 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 教授 (40221949)
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Keywords | スピントロニクス / スピン偏極電子源 / 強磁性半導体 / クラスター / ハーフメタル / 磁気光学効果 / 異常ホール効果 |
Research Abstract |
本研究では、半導体スピントロニクスの要素技術の一つである電子のスピン制御を目指し、強磁性半導体の強磁性特性の制御・向上とその結果得られた結晶のスピン偏極電子源への応用の可能性を探索することを目的としている。これまでの研究で、強磁性半導体である(Zn, Cr)Teにドナーあるいはアクセプター性不純物をドーピングすると、結晶中のCr組成分布の均一度が変化し、それにより試料の強磁性特性が大幅に変化することを見出している。特にドナーであるヨウ素をドーピングした結晶ではCrが高濃度に凝集したナノ結晶が形成されることにより、強磁性転移温度が大幅に上昇する。本課題はこの成果に基づき、分子線エピタキシー(MBE)による結晶成長において、成長条件によりCr凝集領域の形成を制御し、強磁性特性を向上させることを目的とした。具体的には、ドーピング濃度、成長中の基板温度、成長速度などの種々の条件を系統的に変化させ、Cr組成分布と磁化特性を調べ、これらの条件がクラスター形成と磁化特性にどのような影響を与えるかを明らかにした。その結果、成長中の基板温度がCr凝集領域の形成に大きな影響を与え、特にCrの平均組成が高い場合には、基板温度の上昇によりCr凝集領域の形状が0次元のクラスター状から1次元の柱状に変化することを見出した。このような変化の原因は、基板温度の上昇により成長表面の原子のマイグレーションが促進され、Iayer-by-layerの成長モードでCr凝集領域が成長方向に連続するためであると考えられる。Cr凝集領域の内部は閃亜鉛鉱(ZB)型の結晶構造を保ったまま高いCr組成となっていることが種々の分析により明らかとなっている。ZB型のCrTeは理論的にはスピン偏極度100%のハーフメタルであると予想されており、Cr凝集クラスターないし柱状領域はスピン偏極電子源としての有用性が高いことが示された。
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