2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Creation and control of spin current |
Project/Area Number |
19048026
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 義茂 Osaka University, 基礎工学研究科, 教授 (50344437)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白石 誠司 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (30397682)
野崎 隆行 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (60452405)
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Keywords | スピン流 / 磁性体ナノ構造 / 高周波特性 / 熱輸送 / スピントロニクス |
Research Abstract |
本研究は、反強磁性結合多層膜や反強磁性体などのスピン波とスピン流との結合機構を解明し、スピン流の超高速ダイナミクスの学理を確立するとともに、スピン流ミリ波・THz波デバイスの可能性を明らかにすることを第一の目的とし、さらに、スピン流による熱の輸送・吸収、熱によるスピン流の発生などスピン流に関する非平衡熱力学の確立につながる知見を得ることを第二の目的とする。 平成21年度はミリ波領域の高周波の発生を可能にするスピン波素子の実証のために磁気的に結合した多層膜中の光学モードを電流により励起することを試みた。その結果、比較的小さな交換結合エネルギーを持つ素子において非常に小さな磁場のもとでも20GHz近い発振が得れることを実証した。発振モードは高磁場下では音響モードとなったが、低磁場下では光学モードに移行した。このことはマクロスピンモデルでのシミュレーションの結果とも定性的に一致した。今回は、交換結合エネルギーの小さな膜を用いたが、結合エネルギーの大きな膜厚や物質系を用いることにより容易にミリ波帯に発振周波数が移行することが計算上見積もられた。 「スピン流と熱」に関して、まず、二つの理論的考察を行った。一つは電子とマグノンのBoltzmann方程式を解くことにより、温度勾配があるときのSeebeck係数をマグノンの寄与を考慮して計算するものである。理論上、マグノンはSeebeck係数に大きな寄与を持つことが確認された。さらに、熱力学的な考察により拡散的スピン流に伴うエネルギー散逸をもとめる理論的な表式を得た。ついで、熱勾配があるときにトンネル磁気抵抗素子に生じる起電力を測定する実験を行った。その結果、上下の電極間に温度差があると磁化の相対的な配置に依存する起電力があることを見出した。起電力は非常に小さいが、前述した理論から見積もられるものと矛盾しない結果だった。
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Research Products
(7 results)