2009 Fiscal Year Annual Research Report
金属ナノ構造を用いた光局在場の創製と光化学反応への応用
Project Area | Strong Photons-Molecules Coupling Fields for Chemical Reactions |
Project/Area Number |
19049001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三澤 弘明 Hokkaido University, 電子科学研究所, 教授 (30253230)
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Keywords | 局在表面プラズモン / ナノギャップ / 光電場増強 / 光電変換 / 多光子反応 |
Research Abstract |
本年度は、金属ナノ構造を用いた光化学反応場の創製と反応の定量解析を中心に研究を進めた。実験には、光化学反応の定量解析が可能なジアリールエテン分子の開環反応(フォトクロミック反応)を用いた。本研究では、反応量を定量的に解析がすることが可能な反応容器(金属ナノ構造を含む)を微細加工技術により作製し、反応過程を顕微分光法(吸収)によりin-situに追跡する計測システムを構築した。波長800nmのフェムト秒レーザー光を構造上に照射し、ジアリールエテン分子のフォトクロミック反応を誘起したところ、光照射時間とともに、閉環体の吸光度(ピーク波長:570nm)が減少し、反応の進行が確認された。また、反応の入射レーザーパワー依存性を計測したところ、光反応収率は、レーザー光強度の2乗に比例し、2光子吸収過程を介して反応が進行したことが明らかになった。最も重要な点は、ナノギャップを有する金属ナノ構造がある場合においては、金属ナノ構造が無い場合に比べて、反応量が62倍多くなっていたことが明らかった点であり、プラズモン増強場における光化学反応を定量的に追跡することが可能であることを明らかにした。 また、酸化チタン単結晶基板上に金ナノ構造を精緻に作製し、酸化チタン電極を作用極として光電気化学測定を行ったところ、金から酸化チタン電子伝導帯への効率良い電子注入が実現され、可視光だけではなく波長800-1300nmの近赤外光でも光電変換に寄与することを実験的に明らかにした。特筆すべき点は、積極的に電子ドナーとなる分子を溶液に含まなくても高い効率で光電流が計測される点であり、水や水酸化物イオンが電子源となり光電流が観測されていることが考察される。本光電変換系は、これまで利用されなかった太陽光エネルギーの内の約40%に相当する赤外域光を光-エネルギー変換に利用できる画期的な太陽電池への応用が期待される。
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