2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | New Horizons of Photochromism: Customized Molecular Design and Novel Applications |
Project/Area Number |
19050011
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
阿部 二朗 Aoyama Gakuin University, 理工学部, 准教授 (70211703)
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Keywords | HABI / 有機ラジカル / 高速消色反応 / ラジカル解離 / 電子スピン共鳴 |
Research Abstract |
本研究課題では、ラジカル解離型フォトクロミズムを示すHABI系を改良することで、発色体であるラジカルの拡散を抑制した高速発消色フォトクロミック分子系を開発することである。平成20年度には、ナフタレン骨格で2分子のイミダゾリルラジカルを束縛した1-NDPI-8-TPI-naphthaleneと、パラシクロファン骨格で束縛したpseudogem-bisDPI[2.2]PCの合成開発に成功した。それらのフォトクロミズムでは、室温ベンゼン溶液中の発色体の半減期がそれぞれ180ミリ秒、33ミリ秒の高速消色反応を示すことがわかった。これらの分子を溶かした溶液に紫外光を照射すると、それぞれ緑色、青色に発色するフォトクロミズムを示す。視覚的には、光を照射している時のみ発色しているように見える。 1-NDPI-8-TPI-naphthaleneはビナフチル部位に起因する軸不斉を有し、ラセミ結晶を得ることができるが、キラルカラムを用いて、それぞれのエナンチオマーに光学分割することができた。これらのエナンチオマーを用いて円二色性スペクトルを測定したところ、消色体はもちろんのこと、発色体であるビラジカルでも円二色性を示し、光ラセミ化を起こさないことが示された。さらに、発色体は不対スピンを有する常磁性種であるため磁気円二色性の発現が期待される。 一方、pseudogem-bisDPI[2.2]PCをPMMAに20wt%の濃度でドープしたPMMA薄膜のフォトクロミック特性を検討したところ、半減期が約20ミリ秒というベンゼン溶液中よりも高速な消色反応を示すことがわかった。さらに、繰り返し耐久性を検討するために、薄膜の同一スポットにナノ秒レーザー(波長 : 355nm、パルス幅 : 5nsec、出力 : 4mJ)を繰り返し照射して、発色体の過渡吸収スペクトルの測定を行った。その結果、PMMA薄膜に10,000回照射しても、全く劣化しないことがわかった。このことは、pseudogem-bisDPI[2.2]PCが非常に安定したフォトクロミック分子であることを示すものであり、実用に供する性能を有しているといえる。
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Research Products
(31 results)