Research Abstract |
高圧ラマン分光による半導体クラスレートの研究を行った。対象とした物質は,BaドープのタイプI,ゲルマニウム,クラスレートBa_8Ge_<43>,Ba_8Ga_<16>Ge_<30>,タイプIIIのゲルマニウム・クラスレートBa_<24>Ge_<100>,そしてチャンネル構造を示すBaAl_2Si_2であった。これらのクラスレート化合物においては,Ba原子がゲストとなり低波数域において「ラットリング」振動を示すと言われている。本研究の成果は,次のようにまとめられる。 1.クラスレート化合物Ba_8Ge_<43>,Ba_<24>Ge_<100>,BaAl_2Si_2において,ゲストBa原子のラットリング振動を,ラマン散乱の低波数域(30cm^<-1>-100cm^<-1>)で,世界で初めて観測することに成功した。 2.タイプI型Geクラスレート(Ba_8Ga_<16>Ge_<30>)における同形構造相転移の初めての観測 Ba_8Si_<46>で代表されるタイプI型Siクラスレートで,これまで高圧力下で同じ構造のまま,大きな体積減少を伴う相転移が観測され,多くの興味が持たれている。しかし,同じGe系のBa_8Ge_<43>□_3では,この同形構造相転移は観測されなかった:Si系で提案されている欠陥誘起の相転移機構,すなわち,このBa_8Ge_<43>□_3では,既に欠陥が存在することに起因する。欠陥のないタイプI型GeクラスレートBa_8Ga_<16>Ge_<30>の高圧ラマン散乱と高圧XRD実験を行った。圧力約32GPaでの同形構造相転移(可逆的)の世界で初めての観測に成功した。 3.超高圧力下,30万気圧までのラマン散乱測定に成功し,各種の圧力誘起構造相転移やアモルファス化を見つけ,既知のシリコン・クラスレートの構造安定性との比較を行い,半導体クラスレートの総合理解を得た。
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