Research Abstract |
遷移金属原子(M)を内包したSiクラスターMSi_n(n=10-16)は,安定性が高く,多くのMとnの組み合わせに対して有限のHOMO-LUMOギャップを持つ。そのため,MSi_nを凝集すると,新規な半導体材料ができる可能性が高い。このMSi_nクラスターは,遷移金属原子(M)とモノシランガス(SiH_4)との気相反応で合成できることが分かっている。そこで今年度は,MSi_nを堆積して薄膜を形成し,光吸収スペクトルや電気伝導特性の評価を行った。Mo,WとNbのターゲットに,パルスレーザー光(Nd:YAGレーザー,532nm,0.3W,20Hz)を照射し,SiH_4ガス雰囲気中(2-30Pa)にM原子をアブレーションすることで水素化M-Siクラスター(MSi_nH_x)を合成した。MSi_nH_xは,ターゲットの対向位置にあるSiO_2基板上に室温で堆積した。堆積後,MSi_nH_x薄膜から水素を脱離させるために,真空中(2.0x10^-5 Pa以下)で500℃の加熱処理を10分間行なった。 Mosi_n,NbSi_n,WSi_n膜の光吸収スペクトル測定では,n<5では吸収端が観測されないが,n>5では吸収端のエネルギーがnの上昇に伴って増加し,n=10に到達すると約1eVになった。これは,このMSi_n(n>5)膜が,有限のバンドギャップを有する半導体であることを示している。Mosi_n,Nbsi_n膜の電気伝導度は,200-500Kの間で,温度上昇に伴い増加する半導体的な特性を示した。温度依存性から求めた活性化エネルギーはMoSi_12では0.12eV,NbSi_13では0.07eVになった。 以上のように,MSi_n(M=Nb,Mo,W,n〜10)クラスターを堆積した膜は,エネルギーギャップの開いた半導体であることを明らかにした。
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