2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Novel States of Matter Induced by Frustration |
Project/Area Number |
19052001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
有馬 孝尚 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (90232066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 幸男 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80127274)
石原 純夫 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30292262)
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Keywords | 強相関電子系 / 磁気記録 / 磁性 / 低温物性 / 強誘電体物性 |
Research Abstract |
*TbMnO3の低エネルギー励起の解明 J-PARCに設置されたチョッパー型分光器4SBASONSを用いた中性子散乱実験を行い、磁性強誘電相について全逆格子空間の磁気励起スペクトルを明らかにした。これとTHZ領域の光吸収スペクトルやX線非弾性散乱の実験結果を比べることにより、らせん磁性強誘電相の低エネルギー励起の全貌を明らかにした。 *RMn205系の電気分極発現機構の解明 (TmYb)Mh205混晶系の単結晶をフラックス法で作製し、温度組成相図を作成した。また、Y(MhGa)Mh05混晶単結晶を用いた偏極中性子実験により、スピンカイラリティと電気分極の関係を明確にした。EuMn205やWh205については高圧効果の研究を行った。Eu系では新しいq=(1/2 0 1/2)の相を発見した。Y系では、温度圧力相図を完成するとともに、高圧及び低圧でのq=(1/2 0 1/4)の磁気構造解析と結晶構造解析を行い、両者の違いを明らかにした。 *BiFeO3の磁気強誘電性 精密な格子定数測定と構造解析を行い、磁気秩序が磁歪を通して電気分極増大を引き起こしていることを明らかにした。また、中性子回折とX線回折を併用することでBiFeO3-BaTiO3混晶系での誘電相転移と磁気相転移の関係を明らかにした。その結果、得られた相図は従来の報告とは異なる。 *電子型誘電体における誘電性と電子構造に関する理論的研究。 電子型誘電体の候補として知られるLuFe204において、電気分極の安定性を司る電荷揺らぎの温度依存性とエネルギー依存性を詳細に調べた。分極を伴う3倍周期電荷秩序においては、その揺らぎが電荷秩序温度以下でも大きく残ることを見出し、これによって光学電気伝導度の実験結果から得られている有効光学的キャリア数の温度変化を説明できることがわかった。また低次元有機化合物κ-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3において、分極集団励起の存在を理論的に予測した。光学測定における選択則や偏光依存性を詳細に調べることで、ダイマー励起やハバード励起との関係を明確にし、光学吸収実験で見出されているピーク構造との関係について論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究目的として掲げた4項目について、順調に研究が進んだ。具体的には、(1)結晶構造・磁気構造に対する磁気効果の研究を通じた巨大電気磁気効果の機構解明に関しては、磁気強誘電性の3つの機構を明らかにすることで、その全貌を知ることができた。その結果、(2)磁気構造の電場による制御については、複数の物質で成功した。(3)J-PARCを用いた励起状態の解明も順調に推移しており、(4)多分域構造を利用した新規外場応答の理論予測と実現にも成功した。さらに、当初の計画以上に電子強誘電体に関する実験的および理論的な研究を進めることで、磁気強誘電性の新しい舞台についての知見を得ることができた。
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Research Products
(64 results)