Research Abstract |
ナノスコピックプラズマプロセス制御の各段階年次計画に基づき,以下の成果が得られた. 1.単層カーボンナノチューブ(SWNT)を非磁性触媒を用いて構造制御成長させることは,磁性金属の不純物を完全に排除できるため,未解明であるSWNT本来の磁気特性及び原子や分子内包SWNTの磁性半導体特性を明らかにする上で極めて重要である.そこで,非磁性金属触媒であるAuを利用して,拡散プラズマCVD中で微量の水素添加を行ったところ,(6,5)SWNTが支配的なカイラリティ分布の極めて狭いSWNTの選択合成に世界で初めて成功した.これは,プラズマ中の活性水素による化学的エッチング作用と,炭素とAu触媒との微弱な結合エネルギーに起因しているものと考えている. 2.また,非磁性金属触媒を使わない場合においても,SWNTの構造ばらつきが各触媒からの成長開始までに要する時間(インキュベーションタイム)に起因しているものと考え,プラズマCVD中のSWNT成長時間を精密に制御した.その結果,SWNTの成長初期過程ではカイラリティ分布が極めて狭くなることが明らかになった.以上の二つの実験的発見は,今後の挑戦的課題であるSWNTの精密カイラリティ制御に向けた重要な成果である. 3.光電子融合デバイス特性に関しては,アザフラーレン内包のC_<59>N@SWNTを伝導チャネルに用いたFETにおいて,10Kという低温下では光照射によりその伝導が著しく増大し,温度を上昇すると共に反比例してこの光誘起電流は徐々に減少することが明らかになった. 4.続いて,n型シリコン(n-Si)とp型SWNTあるいはC_<60>内包SWNT(C_<60>@SWNT)から成るpn接合を用いる,赤外光領域の新しい光電エネルギー変換素子機能を創出すべく系統的実験を行った.太陽電池の電極配位のもとで,SWNTが赤外光(1550nm)を電気エネルギーに変換可能であることを実証し,さらに,C_<60>SWNTを利用することで空のSWNTに比べ赤外光に対するエネルギー変換効率が増大することを見出した.
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