Research Abstract |
カイラリティの制御に先立って,単層カーボンナノチューブの合成機構を解明するべく,様々な条件下でアルコール触媒CVD法によって単層カーボンナノチューブを合成し,光吸収やラマン分光測定によって反応前駆体や反応生成物の詳細な検討を行った.通常のエンタノールを用いた垂直配向単層カーボンナノチューブ膜の合成に加えて,^<13>C置換エタノールを用いて合成を行うことによって,単層カーボンナノチューブ膜が根元から成長していることを明らかにした.また,エタノールに少量のアセチレンを加えることで,大幅に合成速度を増加させることに成功し,触媒反応の詳細に関して重要な知見を得た.次に,単層カーボンナノチューブと分散剤の相互作用がカイラリティに依存することに着目し,いくつかの異なる方法で合成した単層カーボンナノチューブを用いて,トリフェニレンなどの様々な構造の高分子を用いて単層カーボンナノチューブの分散実験を試行した.合成・分散された単層カーボンナノチューブの評価については,電子顕微鏡観察,数種類の励起光を用いたラマン分光と可視・赤外吸収分光に加えて,カイラリティ分布の同定のために,可視領域の励起光をスキャンして近赤外領域の蛍光を検出する蛍光分光測定を行った.これらの分光測定では,カイラリティ制御に向けて,定量的なカイラリティ分布の測定が必要となる.そこで,単層カーボンナノチューブの近赤外蛍光分光において,フォノンサイドバンドや垂直励起成分を検証した.さらに,界面活性剤などの環境効果による吸収・発光エネルギーの変化,小さなバンドルの効果などについても,理論的解析を併せて詳細に検討した.さらに,一本の単層カーボンナノチューブからの発光とラマン散乱の同時計測を目指し,架橋単層カーボンナノチューブの合成を試みた.
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