2010 Fiscal Year Annual Research Report
機能性カーボンナノチューブの光物性評価に関する研究
Project Area | Carbon nanotube nanoelectronics |
Project/Area Number |
19054015
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
本間 芳和 東京理科大学, 理学部, 教授 (30385512)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市田 正夫 甲南大学, 理工学部, 准教授 (30260590)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 光物性 / ナノデバイス / 非線光学応答 / フォトルミネッセンス / 位相緩和時間 |
Research Abstract |
単層カーボンナノチューブ(SWNT)の特異な光学特性をデバイスに応用するために、その発光に対する内包物質の影響、および非線形光学応答を解析し、デバイス応用への基本指針を得ることを目的として研究を進めた。 SWNTにはチューブ内部のナノ空間を有することがグラフェンには無い特徴であり、その中に導入する物質により特性を制御すること、また逆に内包した物質の性質をSWNTの発光を通して解析することが期待できる。今期は、SWNTに内包した水の状態によるSWNTの発光特性の変化に着目して研究を進めた。この結果、水の相(固・液・気)に応じた誘電率の変化により、SWNTの励起・発光波長がシフトすることを明らかにした。これを利用することにより、1本のSWNTのナノ空間に閉じ込められた水の相図を構築することができた。さらに、分光イメージング装置を導入し、1本のSWNTの中で、水の相転移の進行をダイナミックに捉えることが可能になった。これまで開発を進めてきた近接場走査光学顕微鏡(NSOM)を用いた蛍光分光法と併せ、今後、1本のSWNTにおける発光現象の均一性や構造欠陥の影響を解明する。(本間、千足) 高純度分離SWNT薄膜試料の吸収スペクトルを時間領域THz分光法やFTIRなどを用いて、1meVから6eVまでの広い範囲で測定した。金属SWNTバンドル試料では0.06eV付近に幅の広い吸収帯が観測された。これは、金属SWNTがバンドルを作ることによって生じた擬ギャップや、アームチェア型以外の「金属」チューブが持つ小さなギャップがその起源であることが考えられる。一方、半導体SWNTバンドル試料でも同様のエネルギー値にピークを持つ幅の広い吸収帯が観測されたが、その起源は金属SWNTと異なり、半導体SWNT中の欠陥によるギャップ内遷移によるものと考えられる。(市田) 以上のように、SWNTに内包された水の状態の効果を明らかにするとともに、SWNT結晶とも言うべきバンドル状態の電子構造や欠陥によると思われるギャップ内状態の存在を明らかにし、SWNTの光学応答の理解と応用に有用な成果を得た。
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