Research Abstract |
単層カーボンナノチューブ(SWNT)を用いた電子デバイス等の実用化を目指すうえで,金属チューブと半導体チューブの選択的製造法や分離技術を確立し,またそれらの選択性や分離効率を正確に評価することは,きわめて重要な課題である.本年度は,密度勾配長遠心分離法により分離した金属,半導体の各成分中の孤立したSWNTに対し,透過電子顕微鏡(TEM)観察にやってカイラル指数の分布を求め,分光測定による結果との対応を検討した(Nano Lett.誌掲載).本研究では,レーザー蒸発法により作製したSWNT試料と,科学蒸着法による市販のSWNT(CoMoCAT)のそれぞれに対し,DGUによる金属・半導体分離を行った.レーザー法試料から得られた金属,半導体成分をそれぞれA,B,CoMoCAT試料からの金属成分をCと表記し,これらの各成分に対し,吸収スペクトルとラマンスペクトルの測定,TEM観察を行った.試料の電子線照射損傷の影響を低減するため,球面収差補正TEM装置の加速電圧を80kVに設定した.DGUにより分離した三種類のSWNT試料のA,B,Cは,それぞれ青色赤褐色,黄色を示した.これらの試料の吸収スペクトルには,金属チューブまたは半導体チューブの光学遷移MiiまたはSii(i=1-4)に帰属される吸収ピークが確認され,その強度比から見積もった金属チューブの比率は,A,B,Cにおいてそれぞれ95%以上,5%未満,90%程度であった。試料AのM11吸収ピークに対応する波長691,633nmの励起光を用いたラマン分光測定の結果,カイラル指数(10,10),(11,8)または(14,5),(12,6)に帰属されるRBMピークが観測され,これらのチューブがAにおける主要な成分であることが示唆された.
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