2010 Fiscal Year Annual Research Report
分子クラスター内プロトン・電荷移動ダイナミクス―凝縮相との違いは何に起因するか
Project Area | Molecular Science for Supra Functional Systems ? Development of Advanced Methods for Exploring Elementary Process |
Project/Area Number |
19056005
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
関谷 博 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90154658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 和彦 九州大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (80213825)
迫田 憲治 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教 (80346767)
南部 伸孝 上智大学, 理工学部, 教授 (00249955)
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Keywords | 高次系 / プロトン移動 / クラスター / 金属・溶媒和 / 赤外分光 / MDシミュレーション / 光異性化 / 量子化学計算 |
Research Abstract |
平成22年度は、以下の2つの課題において新規な成果が得られた。 1.気相における励起状態多重プロトン移動ダイナミクス 超音速ジェット冷却された7-アザインドール・水の1:2クラスター[7AI(H_2O)_2]および1:3クラスター[7AI(H_2O)_3]について調査し、以下の新規な情報が得られた。(1)7AI(H_2O)_2の分散蛍光スペクトルを初めて観測し、励起状態3重プロトン移動が起こる明確な証拠を初めで得た。(2)7AI(H_2O)_2の振電バンドのS_1状態の蛍光寿命の測定から励起状態3重プロトン移動の振動状態選択性の確証を得た。(3)7AI(H_2O)_3のS_1状態の蛍光寿命が内部エネルギーの増加とともに急激に減少することを発見た。その原因が平面架橋構造から非平面環状構造への異性化によることを示した。(4)7AI(H_2O)_3のS_1状態の内部エネルギーが744cm^<-1>を越えると、非平面環状構造を経由した励起状態プロトン移動が生じる新規な反応経路を発見した。本研究は、水素結合ネットワークを介した多重プロトン移動研究における最先端の成果であり、当該分野への波及効果は大きい。 2.赤外光解離分光による遷移金属イオンの配位・溶媒和構造の解明 Ag^+(CH^3OH)_nおよびCo^+(NH_3)_nについて、赤外光解離スペクトルの測定および量子化学計算を行った。Ag^+(CH_3OH)_nにおけるAg^+の配位数は3であり、Ag^+周りの溶媒分子の配置は対称的である。一方、Co^+(NH_3)_nの配位構造は四面体型であり、軌道配向モデルによる予測と一致しない。これは、金属-配位子間反発の最小化が犠牲になっても、配位子-配位子間の反発が最小となる構造が選択されるためであると考えられる。本研究は遷移金属-配位子間の相互作用と構造の関係を分子レベルで解明した成果であり、溶液状態における分子間相互作用の基礎データとなる。
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Research Products
(30 results)