Research Abstract |
本研究では,様々な多光子過程を用いることで,生細胞などの生体試料を複眼的に可視化することを目指している.本年度は,ナノ秒白色レーザーという新しい光源を用いたコヒーレント・アンチストークス・ラマン散乱(Coherent Anti-Stokes Raman Scattering ; CARS)分光イメージングシステムを,独立したシステムとして立ち上げた.具体的には,新しい光学定盤及びクリーン暗室ユニットを導入し,そこにCARS顕微鏡に特化した正倒立顕微鏡を導入した.この正倒立顕微鏡は,試料を挟んで上下から対物レンズをセットすることができる.上側の対物レンズには微調機構を持たせることで,正立側,倒立側の光軸を確実に合わせるよう工夫を施した.また,上側の対物レンズは取り外しが可能で,微分干渉像などの取得もできるよう設計した.これに加えて,培養細胞を測定するときのために,上側の対物レンズに水深対応のものを導入し,ボトムディッシュの試料に直接浸してCARS光の検出ができる光学系を実現した.本システムにより,入射光と出射光の光軸が一致し,効率的なCARS光発生を実現した.本システムを用いて,酵母や脂肪細胞,肝細胞などの生細胞について,指紋領域における"ラベルフリー・マルチカラー"イメージングを実現した.特に脂肪細胞や肝細胞(脂肪肝の組織切片)については,CH伸縮,CH変角,エステル由来のC=Oなどの振動モードを用いて,細胞内脂肪滴を明瞭に可視化することに成功した.
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