2010 Fiscal Year Annual Research Report
液体ヘリウム温度での単一分子分光による酵素の構造・機能相関の研究
Project Area | Molecular Science for Supra Functional Systems ? Development of Advanced Methods for Exploring Elementary Process |
Project/Area Number |
19056011
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松下 道雄 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (80260032)
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Keywords | 一分子 / タンパク質 / 低温 / 分光 / 構造機能相関 |
Research Abstract |
低温における単一タンパク質分光は、タンパク質が生理条件下で機能しているときに取り得る、無数の三次元立体構造を一つずつ調べることができる点で、他の手法では得ることのできない情報が得られる優れた手法である。しかしこれまで技術的制約から、近赤外域に吸収と蛍光を持つタンパク質にしか適用できなかった。これを可視域に吸収と蛍光を持つタンパク質にも適用できるようにすることがこの特定領域研究の第一の目標だった。そのために液体ヘリウム中でも使える対物レンズとして、一体成形反射対物レンズを開発し、既に緑色蛍光タンパク質(GFP)一分子の1.5Kにおける二光子蛍光スペクトルの測定に成功している。同じ反射対物レンズを用いて、青色センサータンパク質であると同時に、細胞内情報伝達物質であるcAMPを産生する酵素でもある、ミドリムシ由来のフラビンタンパク質の一種、photo-activated adenylyl cyclase (PAC)について、一分子の蛍光スペクトルを測定した。ミドリムシから単離、精製したPACは1.5Kでも光退色する。このため、一光子励起を用いることによって光退色を抑制した結果、10,000秒に一回ほどの低い頻度で起こる、50nmを超えるような大きなスペクトルジャンプが観測された。フラビンの結合部位のアミノ酸置換体を作って同様の測定を行い,比較したところ、大きなスペクトルジャンプが見えるためにはGln514が必須であることが分かった。Gln514はフラビンとの間に水素結合を形成しているので、50nmものスペクトルシフトは、この水素結合のプロトンの動きによって引き起こされていると解釈することができる。フラビンが光を吸収したという情報がタンパク質にどう伝わっているのかを解き明かす上で重要な知見といえる。
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Research Products
(4 results)