2007 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解共鳴ラマン分光法によるタンパク質アロステリック機構の動的構造基盤の解明
Project Area | Molecular Science for Supra Functional Systems ? Development of Advanced Methods for Exploring Elementary Process |
Project/Area Number |
19056013
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水谷 泰久 Osaka University, 大学院・理学研究科, 教授 (60270469)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 操 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教 (10464257)
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Keywords | 共鳴ラマン分光法 / 時間分解分光法 / アロステリックタンパク質 |
Research Abstract |
1.リガンド脱離に伴うミオグロビンの高次構造変化 ヘモグロビン(Hb)のサブユニットに構造が似たミオグロビン(Mb)を用い、ピコ秒時間分解紫外共鳴ラマン分光装置を使って、リガンド脱離に伴うタンパク質の初期構造変化をとらえることを試みた。その結果、ピコ秒の時間領域で起る二段階のタンパク構造の変化をとらえることに初めて成功した。さらに、Mbの人工変異体を用いた比較実験からスペクトル変化を示すアミノ酸残基を同定した。その結果、タンパク質部分の初期構造変化は、リガンド脱離後2ps以内に起きるFおよびEヘリックスの変位であることを明らかにした。これらの結果から、ヘムからタンパク質部分への構造変化の新たな伝播経路を提案した。 2.酸素の脱離に伴うヘモグロビンの構造ダイナミクス Hbとmbのリガンド脱着に伴うダイナミクスの研究では、測定上の困難さゆえに、リガンドとして、生理的なリガンドである酸素(O_2)の代わりに一酸化炭素(CO)がこれまで多く用いられてきた。しかし、COを用いた実験では、観測されたダイナミクスがはたして生理的に重要なものであるかどうかに疑問が残る。そこで本研究では、時間分解共鳴ラマン分光法を用いて、O_2の脱離に伴うダイナミクスを調べ、COの場合との比較を行った。その結果、(1)いずれのリガンドの場合も、Mbにおいては1nsでヘムの構造緩和がほぼ完了しているのに対し、Hbにおいてはまだ完了していないこと、(2)Hbにおいて、O_2脱離の場合とCO脱離の場合とでは、ヘムの構造緩和速度が異なることを示している。これは、観測された構造ダイナミクスの違いが生理的に重要な性質であることを示唆するものである。
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Research Products
(9 results)