2008 Fiscal Year Annual Research Report
幹細胞システムにおける非対称分裂による増殖と分化の振り分け機構
Project Area | Cell Proliferation Control |
Project/Area Number |
19057009
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松崎 文雄 The Institute of Physical and Chemical Research, 非対称細胞分裂研究グループ, グループディレクター (10173824)
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Keywords | 脳発生 / 神経幹細胞 / 上皮極性 / 非対称分裂 / 分裂軸 / 運命決定因子 / 神経発生 |
Research Abstract |
自己を複製すると共に分化細胞を生じる幹細胞システムでは、しばしば非対称分裂によってこの二つの細胞種を生み出す。ほ乳類の脳神経発生ではapico-basalの極性をもった神経上皮細胞が幹細胞としての機能を持ち、細胞分裂を行うことによって、自己複製するだけでなく、神経やより分化した前駆細胞といった異なる細胞を生み出す。これまで、ショウジョウバエと同様に、ほ乳動物でもapico-basalの極性に沿って運命決定因子が局在し、その非対称な分配によって娘細胞が異なる運命を獲得すると考えられてきた。しかし、我々の研究から、哺乳類神経幹細胞の分裂は、従来のモデルとは異なり、分裂軸と上皮細胞極性は直交しており、apical面はどちらの娘細胞にも分配されることが判明した。今年度は、新しい技術の導入によりbasal processの分配を計測し、basal processはどちらか一方の娘細胞にだけ分配されることが判明した。すなわち、apical側で分裂する幹細胞から生じる娘細胞対は、apical processと、basal processをともに持つ上皮構造を保持した娘細胞とapical processだけをも細胞のペアがほとんどであることが明らかになった。さらに、引き続き長時間スライス培養を継続し、これらの娘細胞の運命を追跡した結果へapical processだけを引き継いだ娘細胞は、神経分化の決定を受けた細胞となり、自己複製をする幹細胞にはならなかった。他方、完全な上皮構造を受け継いだ娘細胞の半分は再びapical側で分裂する神経幹細胞となった。これらの結果から、自己複製が可能な神経幹細胞となるには、apical processとbasal processの両方を引き継ぐこと、すなわち完全な上皮構造を獲得することが必要条件であることが明らかになった。
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Research Products
(12 results)