2011 Fiscal Year Annual Research Report
茎頂及び根端メリステム新生の共通基盤となる細胞増殖統御系
Project Area | Plant regulatory systems that control developmental interactions between meristems and lateral organs |
Project/Area Number |
19060001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉山 宗隆 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (50202130)
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Keywords | 温度感受性突然変異体 / 細胞増殖 / シロイヌナズナ / 数理モデル / 先端成長 / 側根 / メリステム / RNA代謝 |
Research Abstract |
本研究では、シロイヌナズナの各種温度感受性突然変異体を用いて、メリステム新生の共通基盤となる細胞増殖統御系を追究している。また、細胞増殖統御がもたらすメリステムの先端成長パターンについて、数理モデルを用いた解析も行っている。本年度は、制限温度下で帯化側根を形成するrrd1、rrd2、rid4(temperature-dependent fasciationにちなみTDF変異体と総称)、メリステムの新構築が強い温度感受性を示すrid3の解析、先端成長の数理モデル解析で以下の進展があった。 TDF変異体の責任遺伝子は、RRD1がポリA特異的リボヌクレアーゼ様タンパク質、RRD2とRID4がペンタトリコペプチドリピートタンパク質をコードしており、何らかのRNA代謝への関与が推定されていた。マイクロアレイなどにより解析した結果、どのTDF変異体でも、ミトコンドリアの呼吸鎖構成因子のmRNAがアデニル化された異常な状態で蓄積していることがわかった。また、呼吸阻害剤処理が側根の帯化を誘導することを発見した。これらの結果から、ミトコンドリアのmRNA代謝が呼吸活性を通して細胞増殖域の限定化に作用することが示された。 CUC・STM経路の遺伝子発現を抑制することなどが判明していたものの、直接的な分子機能が不明であったRID3について、改めてin silico解析を行い、rRNA生合成への関与が報告されている出芽酵母のIPI3との類縁関係を見出した。そこで、rid3変異体におけるrRNA前駆体の蓄積を調べて、RID3がプレrRNAプロセッシングにはたらくことを確認した。 体積成長と細胞増殖を関連づける数理モデルを、核内倍加の影響を考慮して、細胞数を基礎とするモデルからゲノムDNA:量を基礎とするモデルに改変した。これにより、根端成長の実測値とモデルとが、よりよく合致するようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プレmRNAスプライシング関連の変異体の解析など、必ずしも予定通りのペースで進んでいない部分もあるが、ミトコンドリアのmRNA代謝と側根原基形成時の細胞増殖制御との関連が示されたこと、RID3の分子機能がrRNA生合成と結びついたことなど、大きく進展した部分もあり、全体としては概ね順調と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
TDF変異体の解析から得られた知見を総合すると、RRD1がRRD2、RID4とともに、ミトコンドリアmRNAのポリ A依存的な代謝を担っており、側根原基形成に際しては、内鞘細胞の非対称分裂を終了させるのに、このmRNA代謝の上昇に支えられた呼吸鎖タンパク質の発現と高い呼吸活性が必要である、と推測できる。この仮説の分子レベルでの検証が、残された重要課題である。CUC・STM経路を負に制御するRID3が、rRNA生合成に関与することが新たに判明したが、一方でやはりrRNA生合成にはたらくRID2は、抑圧変異sriw1の効果から、プレmRNAスプライシングとも接点をもつことがわかっている。今後はこれらの関係を再整理して、全体像を掴み直す。先端成長の数理的解析では、メリステムの細胞増殖と成長のパターンとの関連性、それらの調節の基本特性などを抽出していく。
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Research Products
(15 results)