2019 Fiscal Year Annual Research Report
受精卵の周期的動態が非対称性と体軸を生み出す原理の解明
Project Area | Intrinsic periodicity of cellular systems and its modulation as the driving force behind plant development |
Project/Area Number |
19H05676
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
植田 美那子 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (20598726)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 植物受精卵 / ライブイメージング / 周期変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
受精卵は個体発生の原点である。しかし植物では、受精卵内部でどのような因子が、どのような現象を制御するのか、いまだほとんど分かっていない。その大きな要因として、花の奥深くに存在する受精卵において、細胞内部を生きたまま観察する手法がなく、細胞内で生じる微細な現象、特に周期的に変化する動態を捉えることが困難であることがあった。そんななか、研究代表者らはシロイヌナズナを用いて、植物の受精卵の内部を高精細にライブイメージングできる方法論を構築し、主要なオルガネラの一つであるミトコンドリアが、細胞周期の進行に応じて形態を変化させることを見出した(Kimata et al, 2020)。受精後にミトコンドリアはアクチン繊維に沿って縦に長く連なった構造をとり、受精卵の上側に偏るが、細胞周期が進行して核分裂期に入ると、この連なりが一過的に解消されて点状のミトコンドリアに変化する。さまざまな阻害剤や画像解析を用いた検討によって、このようなミトコンドリアの形状や分布のダイナミックな変化が、受精卵の非対称性や体軸の構築と不可分の現象であることも示唆された。さらに、未受精卵が作られる際の細胞内動態の可視化や、受精後に働く遺伝子の解析も進めたことで、植物の受精後に起こる現象や仕組みについて理解が深まった(Susaki et al, 2021; Antunez-Sanchez et al, 2020)。得られた成果について、学術誌で公表するだけでなく、多くの国内外の学会やセミナーでも発表し、大きな反響を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者らが独自に立ち上げた植物受精卵の精緻なライブイメージング系を用いて、受精卵内部で周期的に変化する事象を見出し、その役割を突き止めるに至った。また、すでに成果として報告したミトコンドリアの他にも、いくつかの周期変化する事象を見出しており、現在進めている詳細な解析によって、受精卵の非対称化や体軸形成と連動した機構が明らかになりつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
受精卵の内部で周期変化するさまざまな事象群について、トランスクリプトーム解析によって制御因子を探るとともに、ライブイメージングと画像解析とを組み合わせて定量化を進める。得られた数値を元に、領域内の他班と連携して数理モデルを構築し、細胞内の周期変化が細胞形態の非対称化、ひいては不等分裂を介して体軸形成に表出する原理を探る。
|