2021 Fiscal Year Annual Research Report
受精卵の周期的動態が非対称性と体軸を生み出す原理の解明
Project Area | Intrinsic periodicity of cellular systems and its modulation as the driving force behind plant development |
Project/Area Number |
19H05676
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
植田 美那子 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (20598726)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 植物受精卵 / 細胞伸長 / ライブイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
受精卵は多細胞生物における個体発生の原点である。しかし植物では、受精卵や初期胚が体軸形成を行う過程において、細胞内でどのような変化が起こるのか、特に、周期的な動態がどのように変調・制御されるのか、ほとんど分かっていなかった。その理由としては、被子植物の花の奥深くに存在する受精卵や胚を生きたまま観察する手法がなかったことと、従来の遺伝学的スクリーニングは、致死性や冗長性のために鍵遺伝子を見出すには不充分だった点が挙げられる。そんななか、研究代表者らはシロイヌナズナを用いて、細胞内動態の詳細なライブイメージングを進めた。特に、精細胞と卵細胞の融合点と受精卵の成長方向と一致するかを調べるために、まず精細胞の最外層を高輝度に蛍光標識するマーカー株を作出した(Shiba et. al., 2023)。この精細胞マーカーと卵細胞の細胞膜を標識した株を掛け合わせ、受精後の動態を詳細にライブイメージングした結果、精細胞と卵細胞が融合した部位に精細胞膜の残骸が持続的に観察され、精細胞侵入点の位置を追跡可能であることが判明した。この点を画像解析によって詳細にトラッキングした結果、受精卵の細胞成長点と一致することが判明した。さらに、受精卵の細胞膜と核を蛍光標識した株についてもライブイメージングを行い、精緻に定量化した結果、受精卵は一定の速度で細胞伸長したあと、一過的に速度を増加させた後に非対称分裂するという、変調を経ることを見出した(Kang et. al., 2023)。加えて、受精卵のライブイメージング系を用いて化合物スクリーニングを行った結果、微小管の配向変化を乱すことで核の分裂を阻害する薬剤や、細胞板の形成不全を引き起こすことで細胞質分裂を阻害する薬剤を得た。これら薬剤の標的候補も探索した結果、キネシンなどの細胞骨格制御因子を見出した(Kimata et. al., 2023)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者らが独自に立ち上げた植物受精卵の精緻なライブイメージング系を駆使し、さまざまな動態と変化を見出して成果発表に至った。加えて、化合物スクリーニングによって得られた薬剤や因子の解析も順調に進行しており、新たな機構が明らかになりつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
見出した事象や制御因子の役割を詳細に検討する。具体的には、受精卵の細胞伸長速度が変調させる時期と細胞周期進行が一致するかや、見出した薬剤が微小管配向に及ぼす影響を詳細にライブイメージングするとともに、画像解析手法も駆使して定量的に判定する。
|
Research Products
(6 results)