2021 Fiscal Year Annual Research Report
対話知能システムの研究開発及び社会実装のための法社会規範の研究
Project Area | Studies on intelligent systems for dialogue toward the human-machine symbiotic society |
Project/Area Number |
19H05694
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
新保 史生 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 教授 (20361355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 伸一朗 静岡大学, 情報学部, 准教授 (90547944)
長島 光一 帝京大学, 法学部, 講師 (20787056)
呉羽 真 山口大学, 国際総合科学部, 講師 (80750215)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | ロボット / AI / 対話メディア / ELSI / ロボット法 |
Outline of Annual Research Achievements |
対話知能学における法的及び倫理的課題について本研究開発対象分野に係る課題の抽出を実施した。ロボットの保護・利用に関する法・倫理・政策、EU新AI整合規則提案にみるAI規制戦略の構造・意図、個人情報保護法の令和2年及び3年改正に基づく実証実験における個人情報の取扱い手続の見直しなど、制度的な課題についての検討を実施した。さらに、個別の課題として、日本人とロボット―テクノアニミズム論への批判、バーチャルアバター・キャラクターをめぐる人格的権利の整理、CGで描かれた人物の実在性および本人特定性:CG児童ポルノ訴訟とディープフェイク・バーチャルヒューマン技術、VTuber法:バーチャルYouTuberの法的地位および人格権の保障などの研究成果を公表した。 2021年度からの研究開発課題である、(1)対話知能学における法令遵守実施手順の策定、(2)自律型・遠隔ロボット認証制度の提案、(3)新興技術研究開発・利用促進に係る法整備に向けた提言に向けた研究を実施について、2021年度は、これら三つの研究目標のうち、「(1)対話知能学における法令遵守実施手順」の策定に向けた検討を実施した。従来の自然人による対面調査ガイドライン等とは異なり、機械(ロボット)による調査における実証実験実施要領としての手順を策定することを目的とするものである。 対話知能学における実証実験を実施する際に確認する事項を具体化したものとして、①法令遵守事項、②対象者への質問内容の適否、③対象者の保護と任意性、④データの取扱い方法(個人情報・プライバシーの保護、情報セキュリティ対策)、⑤安全管理、⑥通知・表示および告知の方法、⑦説明・同意の方法、⑧倫理的課題等を基軸として確認すべき事項を抽出し整理する。当該実施要領の策定にあたっては、適用(実施要領の検証)プロジェクトとの協同により必要な手順を確認し検証を行うための取り組みを実施し、その適用場面の検討に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対話知能学における法・倫理原則について、日本政府がAI利用に関して定めた基本ルール(原則)とアシモフのロボット三原則の対応関係を確認した上で、新たなロボット原則では,現在のAI技術における原則ではなく,将来ロボットがより人間に近い機能を持つようになったときの原則の検討を行っている。また、法・倫理原則の検討実施方法として、公募班の研究者との連携により、将来にわたって汎用的な原則となりうるものを模索する「アシモフを超えろ!プロジェクト」として検討を行っている。 対話知能学における法令遵守実施手順の策定については、A01-A03班との連携による具体的な実施事項として、日本科学未来館と対話知能学プロジェクトを定期的に開催し、一般の参加者に対話知能学の研究内容の詳細を解説し意見を聴取することで社会的受容性の検討を実施した。 各研究班との連携により、昨年度に引き続き日本科学未来館の協力を得てオンラインでのトークイベントを4回開催し、他グループの研究者の研究報告をベースに、法的、倫理的な問題について一般市民を交えた議論を重ねている。また、A01班の吉川雄一郎准教授のグループと共同で、ロボットが法定事項である肖像撮影の同意を取るという実証実験を行った。これは、規制の範囲内で動作するロボットを開発するだけでなく、自ら法律を守り、さらに人間が法律を守るよう支援する、という社会的な役割を持つロボットの社会受容に関する試みである。さらに、実験に際して作成する倫理員会への提出文書を共同で確認し、法定事項に則り、可能な限り自由な研究活動ができるよう内容をブラッシュアップした。加えて、実証実験に参加した市民とシティミーティングを企画した。対話知能学の各グループから研究者6名が参加し、小学生から大人までの幅広い立場や年齢層の市民と、ロボットと暮らす未来について活発な議論がなされた。
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Strategy for Future Research Activity |
1 法律を守り、守らせる対話知能ロボットの社会実装のための実証実験の実施: 「法令遵守を促進するロボットの研究開発」と「ロボットを用いた法令遵守の促進」を実証実験を踏まえて研究。これまでの、ロボットを利用する際に、法令遵守その他の社会のルールを守るための研究という観点ではなく、人間(自然人)がそれらを守るためにロボットを利用するという発想の転換に基づく研究。人間中心や人間を主体としたロボットの利用ではなく、ロボットを主体とするロボット利用の新たな視点からの研究を実施予定。 2 「法律を守り、守らせる対話知能ロボット」の提案: 法律を守ってロボットを運用するという従来からの当たり前の発想ではなく、法律を守ってもらうためにロボットを主体的に利用する方法の実証。ロボットの側ではなく、人間側の倫理的・法的課題をロボット(対話知能)を活用することによって解決するための方法としての提案に向けた研究を実施予定。 3 法律を守らせるための対話ロボットの動作の検証: ロボットが重要事項や難しい説明内容をわかりやすく説明、ロボットの動作も踏まえて対象者との親和性を確保、単なる警報・警告通知機能ではない対象者との対話に基づく法令遵守促進機能、法定通知事項のわかりやすい通知方法の試行、法令違反をロボットにより抑止、対象者の傾聴度合いに応じた説明及びロボットの動作の調整等の検証を実施予定。新興技術研究開発・利用促進に係る法整備に向けた提言の検討の基礎となる制度の調査として、新興技術活用推進のための制度の検討、サイバーとフィジカルの双方が融合するCPS基本戦略の策定に向けた提言の検討にもつなげるため、EUが2021年4月21日にAI整合規則提案を公表しており、その意図の分析を踏まえ、日本における新興技術開発戦略の方向性の検討を目指している。
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Research Products
(34 results)