Planned Research
本計画研究の目的は、西部北太平洋などの下層雲の変動を、海表面温度(SST)を含む気象場および海洋からのエアロゾル供給などの観点から、他の海域の下層雲との対比を含めて明らかにすることである。(i)現場観測研究、(ii)衛星データ・客観解析データの解析、(iii)数値モデル計算の3つの研究により実施してきている。観測研究では、2022年7-8月に北海道東方沖において航空機(DAS King Air)と船舶(新青丸)とで同期したエアロゾルと雲の観測を実施した。観測期間中に7回の航空機と船舶の同時観測を実現し、海洋中の微粒子(数濃度や化学種など)やクロロフィル濃度、大気中のエアロゾル(化学組成や粒径分布など)、雲微物理量(雲水量や粒径分布など)の鉛直分布などを気象要素とともに観測することに成功した。観測終了後にはこれらのデータの初期解析を実施した。衛星データ解析では、MODIS, CALIPSO, CloudSatなど複数の衛星センサーデータの複合利用により、水・氷という雲相の鉛直構造を明らかにした。この結果、雲頂が水で雲内部が氷など、雲頂と雲内部での水・氷の各組合せにおいて雲内の鉛直構造が異なっていることを明らかにした。数値モデル研究では、温暖化時の下層雲量の減少傾向を、雲頂での雲層より上の空気の雲層内への取り込み(エントレインメント)の指標に基づいて説明することに成功した。一般に下層雲量は気温の逆転層の強度(安定度)で説明できる一方において、温暖化時の下層雲量の変化は説明できない問題があった。下層雲量を安定度とともに比湿を反映する雲頂エントレインメントの指標を用いることにより、温暖化時の下層雲量の変化を説明することに成功した。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
観測研究では、計画どおりに2022年7-8月に航空機と船舶による同期した観測を実施することができた。日本が独自の実施するエアロゾルと雲の船舶と航空機の同期観測は初めての試みである。この結果、海洋中の微粒子、大気中のエアロゾル、雲微物理量などを観測することに成功した。観測終了後にはこれらのデータの初期解析を実施した。衛星データ解析では、複数の衛星センサーデータの複合利用など新しいデータ解析手法を開発し、雲の微物理構造などを明らかにしてきた。数値モデル研究では、温暖化時の下層雲量の減少傾向を説明するなどを実施してきた。今後は2022年夏の観測に基づいて、海洋起源エアロゾルの雲への影響などを評価していく予定である。これらの研究成果に基づき査読付き論文を多く出版するなど、研究はおおむね順調に進んでいる。
2023年度は本研究の最終年度となるため、これまでの研究の取りまとめを行う。特に2022年7-8月に実施した航空機と船舶による同時観測の結果をとりまとめる。海洋生物活動の指標であるクロロフィル濃度と海洋中微粒子との関係、海洋からのエアロゾルの放出過程、大気エアロゾルの化学組成と氷晶核特性、海洋エアロゾルと雲微物理量との関係、気象場(寒気移流・暖気移流)と雲の鉛直構造との関係などを明らかにしていく予定である。また数値モデル研究では、この2022年夏の観測に基づいて海洋起源エアロゾルの雲への影響などを評価していく。海洋起源エアロゾルを放出・生成を無くした(あるいは減らした)計算を実施することにより、そのエアロゾル量や雲微物理量などの変化を定量化する予定である。これらの研究成果を学術誌の論文としてまとめる。
All 2023 2022 Other
All Int'l Joint Research (6 results) Journal Article (27 results) (of which Int'l Joint Research: 8 results, Peer Reviewed: 26 results, Open Access: 23 results) Presentation (45 results) (of which Int'l Joint Research: 24 results, Invited: 8 results) Remarks (2 results)
Earth and Space Science
Volume: 10 Pages: -
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https://researchmap.jp/yutaka.tobo/