2019 Fiscal Year Annual Research Report
Climate variability and predictability in the extratropics
Project Area | Mid-latitude ocean-atmosphere interaction hotspots under the changing climate |
Project/Area Number |
19H05703
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
望月 崇 九州大学, 理学研究院, 准教授 (00450776)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小坂 優 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (90746398)
森 正人 九州大学, 応用力学研究所, 助教 (00749179)
今田 由紀子 (金丸由紀子) 気象庁気象研究所, 気候・環境研究部, 主任研究官 (50582855)
宮川 知己 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (80584979)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 気候変動 / 気候モデリング / 地球温暖化 / 予測可能性 / データ同化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,温暖化予測研究の国際標準である大気海洋結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP)に対応する気候シミュレーションを活用し,変わりゆく気候(十年規模変動や地球温暖化傾向)における中緯度海洋の気候学的能動性の変化やその物理を明らかにすることを目指している。そのために,温暖化予測に関わる気候シミュレーションデータを横断的に精査するとともに,機動性が高いさまざまな気候シミュレーションを併用するという特色あるアプローチをとる。 本年度は,次年度以降の物理解析における基礎情報として,日本を含む東アジア域における極端現象や季節進行など中長期的な変化・変調と関わりが深いような中緯度大規模変動(やグローバル変動)について,観測とモデリングデータの双方において整理した。CMIP気候シミュレーションや,大気モデルによる高解像度かつ大規模アンサンブルデータセットd4PDFの解析といった温暖化研究と連携した整備のほか,その他気候シミュレーションの実施・物理解析を実施した。例えば,温暖化シミュレーションにおける将来気候や,過去の気候変動のなかで,日本付近の極端現象が変化・変調のようすやそれとグローバルな海面水温変動の関わりを大規模アンサンブルシミュレーションデータから調べた。また,日本付近の気候が,遠く離れた中緯度大西洋域や熱帯太平洋域,極域といったグローバル気候変動から受ける影響評価をおこない,中緯度気候の変化や変調への影響として想定される要因についてもいくつか明らかにした。さらに,超高解像度結合シミュレーション実施に向けたシステム開発にも取り組んだ。これら,学術的な成果は国内外で開催された学会や研究集会で発表して議論を重ね,投稿論文として取りまとめを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
物理解析に利用する気候シミュレーションデータの整備や,気候シミュレーションの実施のほか,物理解析から次年度以降の研究で注目すべき現象と大規模な気候変動・変調について指針を与えており,現在までの進捗は概ね順調である。具体的項目として,大規模アンサンブルシミュレーションデータd4PDFの解析からは極端降水をもたらす海面水温パターンを同定して,日本の一地域という局所的な降水の中長期変動・変調に注目した場合であっても,グローバル気候との関係性を見出した。同じd4PDFデータに対する別の解析からは,中緯度大西洋域からの影響の主たる要素であるシルクロードパターンについて,温暖化による変調傾向を捉えた。さらに気候モデルシミュレーションから,大気海洋海氷相互作用を通じた北極と中緯度連関が近年強化されている傾向を指摘した。一部の観測データ情報を活用した気候モデルシミュレーションを実施して,熱帯域での大洋間相互作用と関係するような中長期変調傾向を捉えた。 なお,本年度の物理解析では,主として中緯度大気海洋システムにさまざまな変動・変調を与える重要なプロセスを絞ってきたが,それらの予測や予測可能性の議論はより発展させるべき視点に位置付けられる。いずれの事象も,実際のCMIP予測データも扱うなどして,次のステップとしてその予測可能性を議論への発展が期待できる。もっとも,熱帯域での大洋間相互作用は中長期気候変動の予測可能性に深く関わるプロセスとして既に指摘されているものであり,また,極域での大気海洋相互作用は東アジア域の季節予測精度に関わる問題意識から議論したものであり,本年度の物理解析でも既に予測可能性の視点は取り込まれている。
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Strategy for Future Research Activity |
CMIP6気候シミュレーションデータの解析のほか,必要に応じて別途シミュレーションを実施して,中緯度の大気と海洋の結合プロセスについて明らかにしていく。本年度の解析結果を踏まえながら,中長期的に変わりゆく気候のもとでの日本や東アジアの気象や気候に注目しつつ,中緯度大気海洋相互作用の物理メカニズムと予測可能性について解き明かしていく。大規模気候変動の中長期変動だけではなく,それと極端現象や季節進行といった他の時空間的スケールの現象との関わりを強く意識する。 大規模気候変動としては,例えば,熱帯域や極域からの影響も考慮しながら中緯度大気海洋相互作用の働きをより俯瞰的に理解する。極域と中緯度の関わりについて,大気海洋に加えて海氷のふるまいも含めた気候モデルシミュレーションからその相互作用を明らかにする。熱帯域と中緯度の関わりとその温暖化による変調について,観測データを融合した気候シミュレーションから明らかにする。ジェットなど日本の天候に大きく影響する中緯度大気変動について,例えば北大西洋中緯度のような遠方から大気中を辿ってくるシグナルに注目しながら温暖化による変調について精査する。こうした中緯度気候とグローバル気候の時空間的なつながりに加えて,遠方からのシグナルによる日本付近での大気海洋相互作用について調べるため,超高解像度モデルシミュレーションを実現して,日本付近での極端現象の変化や変調の理解を深めていく。 これらの諸研究課題のいくつかについては若手研究員を雇用しながら研究を遂行する。中緯度大気海洋相互作用を軸にしつつ,他大洋や極域,熱帯域も含めた気候変動に対する研究グループとの情報交換を密にしながら幅広い視野をもつ人材育成に努める。こうして得られた成果は,国内外の学会や研究集会などで発表するとともに,投稿論文にまとめる。
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Research Products
(31 results)