2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Program of totipotency: From decoding to designing |
Project/Area Number |
19H05757
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡江 寛明 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (10582695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大日向 康秀 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (70415107)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 全能性 / 幹細胞 / 人工胚盤胞 / 人工胎盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、独自の幹細胞培養技術を駆使し、マウスにおいて試験管内で胚発生能を幹細胞のみで再構成する。また、ヒトにおいても胚盤胞を構成する全細胞系譜の幹細胞化を行い、それぞれの特性を解析する。本年度は、マウスにおいて、ES細胞、TS細胞、原始内胚葉幹細胞(PrES細胞)の共培養により、胚様構造(ETP複合体)を作製し、試験管内及び子宮内での発生能を解析した。ヒトにおいて、ナイーブ型ES/iPS細胞およびTS細胞の維持に重要なmiRNAクラスターを同定した。成果の概要を以下に示す。 1.マウスにおいて、着床前エピブラストの幹細胞としてES細胞が、栄養膜の幹細胞としてTS細胞が樹立報告されていたが、残る原始内胚葉については幹細胞の報告が無かった。我々は世界で初めてPrES細胞の樹立に成功し、論文として発表した。これは、マウスにおいては胚盤胞を構成する全ての細胞系譜の幹細胞が揃ったことを意味し、理論的に試験管内で人工胚再構成を行うための条件が整った。ES細胞、TS細胞、PrES細胞の共培養によって得られたETP複合体によっては、試験管内で、少なくとも部分的には着床前後の発生過程を再現できた。更に子宮内では、正常な胚発生を再現することはできなかったが、卵黄嚢様構造を伴う胚様構造を派生させることに成功した。 2.昨年度までに、プライム型ES/iPS細胞はTS細胞へと分化できなこと、プライム型ES/iPS細胞ではTS細胞の維持に必要な19番染色体のmiRNAクラスター(C19MC)がDNAメチル化によって抑制されていることを明らかにしていた。本年度は、C19MCの詳細な発現解析と機能解析を進めた。その結果、C19MCがp53経路に関連する複数の遺伝子を抑制することで、TS細胞の増殖を促進している可能性が示唆された。また、C19MCのプロモーター領域のゲノム・エピゲノム編集を行うことで、C19MCがTS細胞のみならず、ナイーブ型ES/iPS細胞の維持にも重要であることを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
マウスPrES細胞について論文として発表した(Ohinata et al, Science (2022))。ETP複合体について、試験管内及び子宮内での発生能を解析した。子宮内で、正常な胚発生は再現できなかったが、卵黄嚢を伴った胚様構造を派生させることに成功した。また、胚様構造作製条件のスクリーニングの系を構築し、今後はより多因子について効率的に、再構成の条件を検討することが可能となった。ヒトにおいては、C19MCがTS細胞のみならず、ナイーブ型ES/iPS細胞でも重要な役割を担うことを突き止めた。近年、ヒトにおける初期発生機構の解明が急速に進んでおり、マウスとヒトでは従来考えられてきた以上に、初期胚由来幹細胞の培養条件や性質が異なることが示唆されている。ヒトのナイーブ型ES/iPS細胞は、胚体だけではなく、胚体外組織である胎盤や卵黄嚢にも寄与する全能性を保持するという新たなモデルが提唱されつつあり、本研究の成果は、C19MCが全能性の維持に関与している可能性を示唆している。以上のように、研究成果がトップジャーナルに掲載され、予想外の成果も得られていることから、研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、マウスにおいては、幹細胞で発生能を再構築する研究を継続する。ETP複合体形成のための基本プロトコールは本年度までに確立した。来年度は、注目するシグナリングについてアゴニスト及びアンタゴニストの組み合わせ、添加する因子の濃度、細胞数、培養期間、酸素濃度等、様々なパラメーターについて、スクリーニングを行い、幹細胞によるより精密な胚の模倣を試みる。また、近年、ヒトとマウスにおいて初期発生機構が非常に異なることが解明されつつあるが、生体内で機能的に検証可能なヒト型発生のモデルとして、ブタ初期胚由来幹細胞の樹立を進める。本年度までにブタTS細胞の樹立に成功しているが、それらの胚盤胞内での挙動、胎盤キメラ形成能について解析を進める。更に、ブタTS細胞-ヒトナイーブiPS細胞異種ブラストイドを作製し、試験管内及び生体内でそれらの発生能を解析する。これら実験では胚を全く使用しないため、文部科学省が定める特定胚研究に関する指針には抵触しないが、異種ブラストイドのブタ子宮への移植を行う前には、学内の倫理審査委員会、必要によって文部科学省の審査を受ける。また、ヒトTS細胞およびナイーブ型ES/iPS細胞におけるC19MCの機能に関する研究成果を論文化する。さらに、独自のヒト人工胚盤胞培養系を立ち上げ、着床期の胚発生を模倣可能か検討する。
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Research Products
(8 results)