2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Program of totipotency: From decoding to designing |
Project/Area Number |
19H05757
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
岡江 寛明 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (10582695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大日向 康秀 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (70415107)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 全能性 / 栄養膜幹細胞 / 原始内胚葉幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、独自の幹細胞培養技術を駆使し、マウスにおいて試験管内で胚発生能を幹細胞のみで再構成する。また、ヒトにおいても胚盤胞を構成する全細胞系譜の幹細胞化を行い、それぞれの特性を解析する。本年度は、マウス原始内胚葉幹細胞(PrES細胞)の樹立に成功し、論文を発表した。また、ヒトTS細胞およびナイーブ型ES/iPS細胞におけるC19MCの機能に関する研究成果を論文として発表した。成果の概要を以下に示す。 1.マウスにおいて、胚盤胞を構成するエピブラスト、栄養膜、原始内胚葉の3つの細胞系譜の内、これまで報告がなかった原始内胚葉幹細胞(PrES細胞)の樹立に成功し、発表した(Science 2022)。PrES細胞は胚盤胞への注入によって、高効率に原始内胚葉に寄与し、原始内胚葉を欠いた胚の補完も可能だった。ES細胞、TS細胞、PrES細胞を組み合わせ作製した胚オルガノイドは、偽妊娠マウス子宮に高効率に着床し、卵黄嚢様組織に囲まれた胚様構造を派生した。 2.ナイーブ型ヒトES/iPS細胞はTS細胞へと分化できるが、プライム型ES/iPS細胞は分化できなことを見出した。このような表現型の違いの原因を探るため、WGBS、RNA-seq、miRNA-seqを行った。その結果、プライム型ES/iPS細胞では19番染色体上のmiRNAクラスター(C19MC)がDNAメチル化によって抑制されていることを明らかにした。一方、ナイーブ型ES/iPS細胞ではC19MCは脱メチル化されていた。さらに、C19MCのプロモーター領域のゲノム・エピゲノム編集を行うことで、C19MCがTS細胞の維持および分化に必須であることを明らかにした。以上の成果を論文として発表した(Nat Commun 2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスにおいては、PrES細胞の樹立に成功し、子宮内で胚様構造を派生させることにも成功した。それらについての成果を論文として発表した。ヒトにおいては、C19MCがTS細胞の維持およびES/iPS細胞からTS細胞への分化に必須であることを突き止め、成果を論文として発表した。以上のように、着実に研究成果が得られていることから、研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスにおいては、現在の胚オルガノイドが発生能を保持しない原因の一つはTS細胞が胚盤胞の栄養外胚葉の性質を捕捉できていないことにあると考えている。そこで、来年度は、新規TS細胞の樹立を行い、樹立した株の胚への寄与能を解析する。また、マウスおよびブタでの研究成果をもとに、ヒトでいまだ樹立されていない原始内胚葉幹(PrES)細胞の樹立を検討する。さらに、ヒトTS細胞、ES/iPS細胞、子宮内膜オルガノイド等を活用して独自のヒト着床モデルを立ち上げ、着床期の胚発生を模倣可能かどうか検討する。
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