2019 Fiscal Year Annual Research Report
生命金属動態を制御するシャペロン分子ネットワークの解明
Project Area | Integrated Biometal Science: Research to Explore Dynamics of Metals in Cellular System |
Project/Area Number |
19H05765
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
古川 良明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (40415287)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / SOD1 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の研究では、ALSの主要な病変部位である脊髄を用いて、ミスフォールドした野生型SOD1の有無が論じられてきたが、その存在についてはコンセンサスが得られていない。そこで本研究では、脳や脊髄における変化をより鋭敏に反映すると考えられる脳脊髄液(CSF)に着目し、孤発性ALSやその他の患者から採取したCSFに含まれるSOD1がミスフォールドしているのかを検討した。SOD1は細胞内に存在するタンパク質だが、一部は細胞外に分泌され、ALSの罹患に関わらず、脳・脊髄を取り囲むCSFにSOD1が検出されることが知られている。また、ミスフォールドしたSOD1を選択的に認識する抗体を用いたサンドウィッチELISAにより、CSFにおけるミスフォールド型SOD1の極微量検出を可能にした。その結果、本研究で扱った21例全てのALS患者のCSFにおいて、ミスフォールドしたSOD1が検出された。また、パーキンソン病(PD)や進行性核上性麻痺(PSP)といった他の神経変性疾患の患者の一部からもミスフォールドしたSOD1が検出されたが、神経変性疾患ではない患者のCSFからは全く検出されなかった。 また、ミスフォールドしたSOD1を認識する抗体のうち、我々が開発したapoSOD抗体は金属イオンの解離に伴うSOD1の構造異常を検出することができる。孤発性ALS患者のCSFにはapoSOD抗体に陽性のSOD1が検出されたことから、SOD1から金属イオンが解離していることが示唆された。その他の抗体を用いた検討とあわせると、孤発性ALS患者のCSFに存在するミスフォールド型のSOD1は、銅・亜鉛イオンの結合部位付近の内部構造が溶媒側に露出したような異常構造をとっているのではないかと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の研究で、孤発性ALS患者のCSFにはミスフォールドした野生型SOD1タンパク質が含まれており、それらは極めて高い細胞毒性を発揮することが初めて明らかとなった。他の神経変性疾患の患者の一部からもミスフォールド型SOD1が検出され、ミスフォールド型SOD1はALS以外の疾患を理解する上でも重要な物質であることが示唆された。ミスフォールド型SOD1の単離方法を確立できたことからも、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
神経変性疾患患者の脳脊髄液からミスフォールド型SOD1を単離する手法を確立でき、その手法を利用することで、患者から得られたSOD1タンパク質に関するより詳細な特徴について、検討を進める計画である。
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Research Products
(18 results)