2022 Fiscal Year Annual Research Report
Protein metalation that controls biometal dynamics in the cells
Project Area | Integrated Biometal Science: Research to Explore Dynamics of Metals in Cellular System |
Project/Area Number |
19H05768
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
神戸 大朋 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (90303875)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宗兼 将之 金沢大学, 薬学系, 助教 (80804806)
杉本 宏 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 専任研究員 (90344043)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 亜鉛輸送体 / メタレーション / 生命金属 / メラニン / チロシナーゼ / 有害金属 / 銅 |
Outline of Annual Research Achievements |
Znはタンパク質と結合する(メタレーションする)ことで多彩な生理機能を発揮するが、その分子機序は明らかにされていない。これまで我々のグループでは、細胞表面や細胞外で機能するZn酵素の中から、特に初期分泌経路に局在するZn輸送体によって活性化されるものに関する解析を実施してきた。本研究では、細胞小器官内在型のZn酵素としてメラニン合成に関わる酵素に着目した。メラニンは、メラノソームにおいてチロシンを出発点とする酵素反応を経て合成され、この反応には、チロシナーゼ(TYR)、チロシナーゼ関連タンパク質1と2 (TYRP1およびTYRP2)の3つの酵素が関与する。これら3つのチロシナーゼ酵素群は全てメラノソーム内腔に局在し、70%以上のアミノ酸配列の相同性および同一の活性中心構造を持っている。TYRが2つのCuイオンを有するCu酵素であることから、TYRP1とTYRP2もCu酵素であると考えられてきたが、今回、我々は、TYRP1がZNT5-6ヘテロ二量体とZNT7ホモ二量体より輸送されるZnを必要とするZn酵素であることを発見した。また、ZnインポーターであるZIP8はZnだけでなくMn取り込みにも関与し、金属取り込みにおいてZnとMnが拮抗するという知見を端緒として解析を進め、ZIP8を介した拮抗だけでなく、細胞レベルで両金属が拮抗することを見出した。特に、過剰なMnが複数の亜鉛酵素の活性を低下させることを見出し、さらにZnエクスポーターであるZNT1や細胞内Zn結合タンパク質メタロチオネインの発現にも影響を与えることを見出した。これらの結果は、細胞内金属ホメオスタシスが撹乱される機序に新たな知見を与える成果となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Znメタレーションがメラニン色素生合成に関わる酵素(チロシナーゼ関連タンパク質1: TYRP1)の活性化に関与することを示す分子知見を得たほか、MnがZnと拮抗することを細胞レベルで明らかにすることができ、予想以上の研究成果を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
【生命金属科学基盤構築】 1.がんの増殖に密接に関連するZn酵素の活性が、ZNT輸送体を欠損させた細胞で消失することを見いだした。ZNT輸送体を欠損させたがん細胞株をヌードマウスに移植してがん細胞の増殖にどのように影響を与えるのか解析を進め、Znメタレーションの過程の病理的意義に関する知見を集積させる。 2. Cu及びZnメタレーションがメラニン色素生合成に関わるチロシナーゼ酵素群(TYR、TYRP1、TYRP2)の活性化に関与することを示す知見を得ており、この過程の機序を解明する。特に、CuがメタレーションするTYRと亜鉛がメタレーションするTYRP1の間でいくつかの領域を交換したキメラ変異体を作成し、これらの変異体をZNT5-6とZNT7の機能欠損株およびATP7A欠損株に導入して、TYRP1とTYRの特性を制御する最小領域を特定する。この領域に結合して相互作用する分子を免疫沈降にて精製し、質量分析装置(LC-MS/MS)を用いて同定する。同定した分子の機能解析を実施し、なぜTYRには銅が、TYRP1には亜鉛が結合するのかなど、未知の制御機構に関する知見を収集する。 【研究項目A03】有害金属の生体内動態と作用機序 ヒトHAP1細胞を用いて生命金属(Zn/Fe/Cu)の輸送体の欠損株および複数の輸送体を同時に欠損させた多重欠損株、および生命金属輸送体の発現をオンオフできるシステムを組み込んだ細胞を用いて、各金属輸送体の発現を変化させたときの細胞の応答を解析する。また、樹立株に有害金属を作用させ、それぞれの輸送体の有害金属輸送および発現変化に関する知見を集積する。
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