2020 Fiscal Year Annual Research Report
In-cell NMR studies of metalloproteins
Project Area | Integrated Biometal Science: Research to Explore Dynamics of Metals in Cellular System |
Project/Area Number |
19H05773
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
伊藤 隆 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (80261147)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | in-cell NMR / 金属結合タンパク質 / 立体構造 / 溶液NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
金属結合タンパク質の細胞内動態については,クラウディング環境特有の相互作用(排除体積効果・非特異的相互作用)に加え,様々な「生命金属」イオンとの結合や,機能発現に関わる他の因子との特異的相互作用により強い影響を受けていると予想される.細胞試料を直接NMR測定するin-cell NMRは,生細胞内のタンパク質の動態を原子分解能で解析可能な現存する唯一の手法である。本研究では,金属結合タンパク質が関与する生命現象のin situ解析を行うことを目的とし,NMR解析手法の高度化を行うことを目的としている. 本研究では,以下の4つのテーマで要素技術の研究を行う.すなわち,(1)迅速で高感度な多次元NMR測定法,(2)情報科学を駆使した,自動NMRデータ解析と高精度自動立体構造解析法,(3)細胞試料のマイクロ培養技術,(4)複合体形成やドメイン間相対配置の解析に資する効率的なランタノイド標識法の開発である.今年度は特に(2)と(4)に注力して研究を行った. 要素技術開発の成果として,今年度は,まず「常磁性NMR情報を用いたlinear diubiquitinの立体構造解析」を行い,溶液中においてopen型とsemi-close型のコンフォメーション平衡状態にあることを明らかにした.また「常磁性NMR情報を用いたマルチドメインタンパク質GRB2の立体構造解析」を行い,結晶構造とは明らかに異なるドメイン間相対配置を持つ立体構造を得た.さらに,FixJのドメイン間相対配置のNMR解析なども進めた. 溶液NMRの他の手法を用いた応用研究も行い,15N-NMR直接観測による,補色順化におけるセンサータンパク質の解析にも成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,「生命金属科学研究基盤構築」として,in-cell NMR解析系の確立を,また「測定解析法の高度化」として,最先端の溶液NMR測定・解析手法,情報科学を用いたタンパク質の立体構造解析法などをさらに高度化することを計画し,これに従って2020年度の研究を進めた. 新型コロナウイルス感染症の発生と首都圏における蔓延によって,研究活動は一時大きく制限を受けたが,その中で項目を絞って効率よく研究を行った結果,要素技術開発で良好な結果を得ることができた. また,新しい要素技術を用いた応用研究においても,linear diubiquitinおよびGRB2蛋白質のドメイン間相対配置を決定するなど,生物学的にも興味深い成果が得られた. さらに,FixJのNMR構造解析,イネに含まれる鉄センサータンパク質HRZの構造機能相関解明に関する研究,アコヤガイ靭帯の石灰化に関わるペプチドの立体構造解析など,領域内の共同研究も順調に進捗している. 以上のことから,2020年度に計画していた研究の多くについては当初の計画に従って推移しており,また本新学術領域内の他の研究者の研究にも利用できる技術の開発も進んでいることから,本研究は全体としておおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,計画の修正を適宜行いつつ研究を継続し,(1) in-cell NMRの手法開発と高度化,(2) in-cell NMRを用いた金属動態に関わるタンパク質の解析(実証研究),(3) in-cell NMRを用いた応用研究,ついて研究を進めていく. (1)については,圧縮センシングを用いた手法の有用性の検証,NMRスペクトルの自動解析プログラムの最適化,複数の立体構造の存在を仮定したmulti-state構造計算法の確立を行う.さらに,長時間のin-cell NMR解析を可能にするbioreactorシステムの改良を進めるとともに,植物培養細胞を用いた系の確立も進め,植物細胞では世界初の高分解能NMRスペクトルの取得に挑戦する. (2)については,領域内の共同研究を通じて金属動態関連タンパク質に適用することで,前項で述べた手法の堅牢性を検証しつつ,実証研究を行っていく. (3)については,in-cell NMRを用いた,疾病原因遺伝子産物と阻害剤候補分子の結合の「その場観察」の応用研究を,いくつかの系で進める. 以上に加えて,単離精製された試料のための溶液NMR手法についても,ニーズに合わせた開発研究を行うことで,測定解析法の高度化を推進していく.
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Research Products
(9 results)