2019 Fiscal Year Annual Research Report
Femtosecond time-resolved X-ray measurement of metal complexes
Project Area | Non-equilibrium-state molecular movies and their applications |
Project/Area Number |
19H05782
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
足立 伸一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (60260220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 哲夫 公益財団法人高輝度光科学研究センター, XFEL利用研究推進室, 研究員 (90648073)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 放射光X線 / 金属錯体 / 時間分解計測 / 超高速ダイナミクス / X線自由電子レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
本領域の研究対象は、タンパク質分子だけに留まらず、タンパク質の中に取り込まれて活性中心を構成する金属錯体を取り出して、その高速分子動画を観測することも、本新学術領域の重要なターゲットの一つである。本計画班(B01班)では、「金属錯体のフェムト秒時間分解分子構造・ 電子状態計測」という目標を掲げて、主に時間分解X線分光・X線散乱の手法を用いて、フェムト秒オーダーで現れる金属錯体の過渡的な分子構造および電子状態の解明を目指している。さらに、A01班における天然の光合成反応を模倣した人工光合成反応の開発研究と連携し、光触媒機能を示す金属錯体をターゲットとして、その光エネルギー変換のメカニズムを時間分解X線計測を駆使して明らかにすることを目指す。 溶液中で進行する光化学反応の計測には、これまで主に赤外から紫外域における時間分解分光法が用いられてきたが、これらの時間分解分光法は特定の元素(例えば、金属タンパク質の活性中心である金属元素)に注目した元素選択的な計測には適していない。そのような元素選択的な計測には、原子の内殻励起を通じて金属原子の電子状態や金属原子周辺の構造を検出できるX線分光計測法が最も適した手法である。本研究班は、時間分解X線計測と相補的な役割を担うC01班の時間分解分光および計算科学グループとも密接に連携しながら研究を進める。 2019年度は、銅1価フェナントロリン錯体の光励起後の構造変化と分子振動の計測を試み、Cu-K吸収端でのX線吸収分光スペクトルの解析から、光励起直後の電子移動(MLCT)に伴う錯体構造のヤーン・テラー歪みと分子振動を明らかにした。このような時間分解X線計測の応用展開を目指した検討を、他の試料や計測法についても積極的に進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、幅広いエネルギー範囲において、様々な金属元素の時間分解X線発光分光計測に対応するためにX線分光結晶を準備した。XFELは、自発光を増幅する発振方式を採用しているため、シングルショット毎に光源パラメータ(強度、スペクトル、タイミング等々)が揺らぐ。このような光源を利用してX線発光スペクトルを高い精度で規格化するためには、X線分光結晶や検出器をスキャンする方式ではなく、波長分散型 (von Hamos型)の方式で特定の波長範囲を一括計測することが望ましい。そこで一括計測のための分光器の性能を活かすことができるよう、X 線分光結晶を作製した。また、2つのX線発光分光器とX線散乱、X線吸収分光を計測するための既存装置を組み合わせ、金属錯体の過渡的な分子構造や電子状態を観測するための基盤的プラットフォームを構築した。これらの整備により、銅1価フェナントロリン錯体の光励起後の電子状態変化の計測を試み、Cu-K吸収端でのX線発光分光スペクトルの解析を進めている。このような時間分解X線計測の応用展開を目指した検討を、他の金属錯体や計測法についても積極的に進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究班では、光反応性金属タンパク質の活性中心モデルとしての金属錯体を主な対象とし、その分子構造と電子状態の時間発展をフェムト秒の時間分解能で精密に計測・解析することにより、金属元素を含む生体分子の機能発現メカニズム解明へアプローチすることを目的としている。今後の方針として、分子構造については、X線溶液散乱およびEXAFS法、電子状態についてはXANES法およびX線発光分光法を相補的に活用し、振動分光法など他の時間分解分光法や理論計算の情報も踏まえつつ、金属錯体における構造と電子状態の時間発展を解明し、その機能発現の機序との関連を総合的に議論する。特に、A01班における天然の光合成反応を模倣した人工光合成反応の開発研究と連携し、光触媒機能を示す金属錯体をターゲットとして、その光エネルギー変換のメカニズムを時間分解X線計測を駆使して明らかにすることを目指す。
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Research Products
(26 results)
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[Book] X線分光2019
Author(s)
日本化学会、福本 恵紀、野澤 俊介、足立 伸一
Total Pages
126
Publisher
共立出版
ISBN
978-4-320-04472-2
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