2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of fixed target micro-crystallography dedicated to structural dynamics study
Project Area | Non-equilibrium-state molecular movies and their applications |
Project/Area Number |
19H05783
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山本 雅貴 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 部門長 (60241254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊坂 崇 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 構造生物学推進室, 室長 (30291066)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 / 構造ダイナミクス / 放射光 |
Outline of Annual Research Achievements |
真空カメラおよびin-situ測定系について、開発した装置のさらなる高度化を進めた。 真空カメラ:前年度の実験において、減圧下で顕在化する微弱かつ非対称なバックグラウンド散乱があることを確認し、大気圧下に加えて、減圧下でも光学調整が必要であることが判明した。減圧下でのビーム調整手法の確立を目指した本年度前期のビームタイムで、バックグラウンド散乱強度が等方的になるまで大気圧下で光学調整を行なった後、カプトンフィルムを窓材とするX線取出し窓を取り付け減圧を開始したところカプトンフィルムが破断し、急激な大気流入により真空槽内に設置したゴニオメーター等の機器が破損した。修理のため、2022年度内に減圧下での光学調整法の検討は実施できなかった。回折計の修理に当って、X線取出し窓の窓材をカーボンファイバー膜とカプトンフィルムを一体成形した素材に変更してX線取出し窓を高強度化した。また、ビームストップ位置調整用の水平軸に用いている直線導入機の位置制度及び再現性向上のための補強など真空カメラの改良を実施した。 In-situ測定用試料雰囲気制御の開発を中心に実施した。試料環境雰囲気制御に用いる装置の高温対応について、70℃まで対応した装置の評価データの取得と安定性の改良を進めた。微小結晶SS-ROX法によるタイムスライス高速データ測定法の開発では、2インジェクターをベースとした試料導入法を整備した。HAG法に適した結晶化方法開発では、これまで設計した多量体形成ペプチドを目的酵素のN/C両末端に接続し人工蛋白質を調製、活性のある集合体を作成、変異により集合度の調節も実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
真空回折計の開発においては、実験時にX線取り出し口となるカプトン窓の破損により回折計が故障したため、真空下での光学調整によるバックグラウンド散乱の低減と低分子試料を用いた評価を進められなかった。一方で、回折計の修理に伴い、ビームストップ水平軸に利用している直線導入機の補強、鉛直方向のアクチュエータ制御への切り替え、より高い強度が期待されるカーボンファイバー積層カプトン窓への移行等を実施した。またカプトン窓の真空耐久試験用治具を作製した。試料調製では、公募班と協力したSiN薄膜の大型化、結晶試料を高密度にグリッド上に展開する条件検討を進めた。 in-situ測定系の設計製作では、安定に20-70℃の温度範囲での調湿操作が可能となり、ソーマチン結晶を用いた評価実験では、昇温と調湿を組み合わせた回折実験を行い可逆的な相転移の誘導が確認できた。現在、論文発表に向けた準備を進めている。微小結晶を用いたタイムスライス高速データ測定法の開発では、SACLAで使用実績のある高粘度媒体インジェクターを導入した。放射光ビームラインにおけるミリ秒オーダーの測定では、SACLAでは問題にならない媒体の振動の影響が回折像に現れた。そこで、シースガスや媒体の吸引をなくし、長時間安定に試料を流し続けるための条件を確立した。結晶化法については、これまで設計した多量体形成(3-6量体および2量体)ペプチドを目的酵素のN/C両末端に接続し人工蛋白質を調製、これに酵素活性が存在することを確認した。アフィニティタグのプロテアーゼ切断により会合が開始するが、切断後の濁度と粒径の上昇を実験で確認した。また電荷会合度の異なる変異体を作成、分子会合の評価を進めた。一方、新たなペプチド会合体の設計基盤となる4量体3種類の結晶構造を得た。 真空回折計の評価実験に遅れは出ているものの、その他の項目は順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
真空カメラについては、前年度までに洗い出した課題をもとにバックグラウンド散乱の低減に向けた検討を進める。さらに、大気下および真空下において低分子標準試料を用いた評価実験を実施する。回折計本体の修理と並行して行った改良により、ビームストップの位置精度や移動に伴う位置再現性の改善が期待できる。真空下での光学調整により、バックグラウンド散乱の異方性を解消し、等方的な極低バックグラウンド散乱を実現する。その設定において、真空下および大気下における標準試料シチジンの回折データ収集を行い、極低バックグランド測定に起因するデータ処理、構造解析への影響を調査する。また、公募班と協力して試料グリッドのSiN窓大型化を行い、データ取得効率を向上させるとともに、生体高分子の微小結晶試料における回折データ取得、構造解析を目指す。 高温対応調温調湿装置については放射光ビームラインへの設置および動作試験、試験測定を行いつつ、20-70℃昇温測定法の開発と論文発表の準備を進めると共に、実験機会を提供する。rtHAG法とSS-ROX法を組み合わせた微小結晶の室温測定法については、タイムスライス高速データ測定法の開発のため、試料の状態を評価するオンライン顕微分光装置をBL41XUに導入すると共に、光励起用ナノ秒OPOレーザー光学系を構築し、利用を開始する。インジェクターを用いたシリアル法については、励起レーザー光学系とタイミング制御系を構築し、光受容タンパク質の時分割構造解析を進める。これらの実験環境は、領域内研究者を中心に実験機会の提供を進めていく。また、HAG法に適した結晶化法の開発では、会合性タグを両端および片側のみに付与したものを調製し、結晶化への効果を評価する。さらに、これまでに設計した複数のタグを用いた分子種を調製し、種々の分析法で評価を行い、結晶化に向けた設計をさらに進める。
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Research Products
(22 results)
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[Presentation] タンパク質結晶解析ビームラインBL41XUの現状と高度化2023
Author(s)
馬場清喜, 長谷川和也, 村上博則, 増永拓也, 重松秀樹, 加藤公児, 奥村英夫, 水野伸宏, 仲村勇樹, 坂井直樹, 河村高志, 平田邦生, 上野剛, 山本雅貴, 熊坂崇
Organizer
第36回日本放射光学会年会
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