2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | New Materials Science on Nanoscale Structures and Functions of Crystal Defect Cores |
Project/Area Number |
19H05790
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
遊佐 斉 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (10343865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 正 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (20218457)
宮川 仁 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (40552667)
川村 史朗 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (80448092)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 高温高圧合成プロセス / 大容量ベルト型装置 / ダイヤモンドアンビルセル / 高圧パルス通電焼結法 / 粒界制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高圧合成によって、新しいチムニー・ラダー(CL)化合物群CrGeγを発見した。これらの化合物はすべて極めて保磁力の小さい軟磁性強磁性体であり、特にCrGe1.774は、室温で強磁性を示す初めてのCL化合物であることが確認された(Sasaki, Hasegawa +, Inorg. Chem. [2021])。また、タングステン多窒化物であるU7Te12型W7N12を新たに発見し、体積弾性率が312GPaと超硬質特性を有することを確認した。 (Chang, Hasegawa +, Inorg. Chem. [2021])。また、新規希土類多ホウ化物(PrB12, CeB12)の超高圧合成に成功した。計算科学と連携して、ホウ素クラスター様式の変化により、RB6に比べRB12が、1.5倍の硬度(Hv=38)を有することを示した(Yusa +, Inorg. Chem. [2022])。 第一原理計算により、SnS(Pnma)がセル体積の増大とともにバンドギャップが大きくなる、通常とは逆の傾向が示された。この特異な振る舞いの実験的検証のために、イオン半径の大きなアルカリ土類金属(Ca, Sr, Ba)との混晶化を試みた。その結果、セル体積の膨張に伴う連続的なバンドギャップの拡大を確認し、SnSのバンドギャップ(1.3-1.5eV)を最大で約2.2Vまで拡大させることに成功した(Kawamura +, Sci rep. in press)。 超高圧力下パルス通電焼結法(HP-SPS)を用い、TaN及びYSZ高品位焼結体の作製を行った。TaNでは、圧力3.5 GPaにおいて、1分以下で高温高圧相であるNaCl型TaN焼結体が作製できること、加熱温度・時間による粒径制御および硬度の改善を確認した。YSZでは、透光性のある焼結体作製に成功し、高圧焼結より透光性が改善される可能性を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大型プレスとダイヤモンドアンビルセルを用いた2種類の高圧合成・結晶成長手法の開発し、金属多窒化物の新規相やナノワイヤー結晶などの創製に成功した。さらに、結晶構造や結晶欠陥を解明するとともに、安定性、体積弾性率、熱膨張率などを明らかにして構造や欠陥との関係を考察した。また、均一反応用急冷凝固プロセスと高圧合成プロセスを組み合わせて,シリコンやゲルマニウム等の半金属に富む新規化合物の創製と構造解析に成功した。特に、チムニー・ラダー化合物において、高圧によって創製される新たな非整合複合結晶構造と高温強磁性との相関を明らかにした。 昨年度から、立ち上げ開発をおこなってきたHP-SPSの実証において、導電性の大きく違う物質例として、TaNとYSZを選択し焼結実験をおこなった。TaNは高温高圧相(NaCl型)の合成同時焼結をおこない、短時間合成焼結による粒成長制御が可能になった。YSZも透光性の改善が見られた。今後、さらに焼結条件を追究していく予定である。 昨年までの窒化物による化合物半導体のバンドギャップ制御に引き続き対象を硫化物に拡大している。環境負荷が小さな太陽電池材料として期待されているSnS(Pnma)についてバンドギャップ制御が可能であるか否かの検討を行った。通常、無機半導体をワイドギャップ化する場合、同族元素の中からイオン半径の小さな元素と混晶化させる手法が採られる。しかしながら、Snと同族の元素は毒性のPbや高価なGeしか存在せず、別の手段を用いてバンドギャップを制御する必要がある。そこで、アルカリ土類金属(Ca, Sr, Ba)と混晶化させることで、バンドギャップ制御を実現した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで開発してきた均一反応用急冷凝固プロセスと高圧合成プロセスと機能物性評価手法に加え、高圧合成用高分解能分光器を利用して、様々な半金属と金属の新規化合物を創製し、相安定性や結晶化学および電子構造を明らかにするとともに、磁性、硬質性、弾性、熱膨張性、蛍光特性などの機能的物性の解明とこれらと構造・欠陥との相関を明らかにする。これらの研究において、理論研究、計算研究、構造解析研究を推進する他班との連携を推進する。 新手法のHP-SPSの開発と利用研究においては、現状、酸化物であるYSZを6GPaで焼結することにより、現状、透光性の焼結体が得られている。今後、圧力領域を下げることで(≦ 2.5 GPa)、高圧焼結との差が試料に現れるか検証していく。またSTOを対象に良質な焼結体作製に取り組む。原料の粒径や処理条件を変えることに加え、試料の導電性に着目し、酸素欠損を通じてキャリア生成した試料とTiをNbに置換することで良導電性を付与した試料についてもHP-PECSを適用していく。更に包接化合物や炭化物・窒化物など、難焼結性物質へ適用していくことで、HP-SPSにおけるプロセスの有効性とその本質の理解を目指す。 IPES/UPS測定から、アルカリ土類金属との混晶化によるSnSのワイドギャップ化は価電子帯上端が下振れすることに起因していることが判明した。これは、通常はp型半導体であるSnSがn型化しやすくなっていることを示している。今後、約1.8eV程度までワイドギャップ化したアルカリ土類金属混晶化SnSでn型化を達成できれば、ホモ接合によるpn接合が実現され、Siタンデム太陽電池の実現に寄与することが期待される。今後、Cl, Brドーピング手法の開発によってn型化を試みる。
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