2021 Fiscal Year Annual Research Report
Highly functionalizing of ceramics with heat resistance and environmental resistance
Project Area | New Materials Science on Nanoscale Structures and Functions of Crystal Defect Cores |
Project/Area Number |
19H05792
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Research Institution | Japan Fine Ceramics Center |
Principal Investigator |
北岡 諭 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 主幹研究員 (80416198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中平 敦 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90172387)
吉田 英弘 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80313021)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 酸化物 / ポテンシャル場 / 物質移動 / 界面 / 欠陥 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、酸化物セラミックス中の“機能コア”により特殊なポテンシャル場において発現する特性を解明するとともに、その情報にもとづき耐熱・耐環境性に優れるセラミックスの新機能創出や革新的プロセス開発を行うことを目的とする。本年度の主な実施内容を以下に示す。 酸素ポテンシャル勾配下(dμO): 耐熱性に優れる酸化物膜の酸素透過試験により取得した物質移動パラメータを用いて、高温のdμO下に曝された酸化物膜中の粒界コアを介した構成イオンの移動に及ぼすdμOの影響を体系的に明らかにした。すなわち、構成イオンが粒内コアよりも粒界コアを優先的に移動する酸化物膜ほど、高酸素分圧側表面近傍の膜中の電子的輸率が大となり、構成イオンの移動をより強く抑制することがわかった。 高化学ポテンシャル溶媒下:高化学ポテンシャル溶媒環境において、微量元素が炭酸カルシウムの結晶成長に影響を与える機構や形成する機能コアの機能を明らかにした。高化学ポテンシャル溶媒中において共存する極微量のSiO2は、ケイ酸として溶解することでpHの緩衝作用を示すようになり、カルサイトの過飽和度を下げることで結晶成長を抑制・制御することがわかった。また、カルサイトコア-マグネシウム添加カルサイトシェル構造は高化学ポテンシャル溶媒中において高い耐環境性能を示すことを示した。 高電磁場: 高電磁場の印加が引き起こす酸化物中の物質輸送を定量的に評価解析した。例えば、高電磁場下におけるTZPの高温塑性流動に及ぼす高電磁場の非熱的効果の抽出に成功した。この変形促進効果は、従来の現象論的解析に依れば変形の活性化エネルギーに反映されることが確認されたが、その起源として高電磁場下で導入される特異な点欠陥構造が考えられる。こうした高電磁場効果は、高電磁場処理したTZPで認められる蛍光発光の強度上昇や擬弾性の顕在化とも合致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高温酸素ポテンシャル勾配下:高温のdμO下に曝された酸化物膜の膜厚方向の電子的輸率を決定する手法を確立した。また、この方法を用いて取得した情報を基に、構成イオンの粒界コアを介した移動を抑制する新しいモデル(表面直下の空間電荷層内のポテンシャル障壁による抑制)を提唱した。このことは、dμO印加に伴うポテンシャル障壁形成の活用により、保護膜の環境遮蔽性を飛躍的に改善できる可能性を示唆する。 高化学ポテンシャル溶媒下: 高化学ポテンシャル溶媒が共存するごく微量の不純物を介して物質合成に影響を与えるメカニズムを明らかにした。この現象は精緻な物質合成において高純度な原料を使用する必然性を明確にしたものであり、高化学ポテンシャル溶媒中を用いた物質合成に関して重要な知見となる。また、耐高化学ポテンシャル溶媒環境に適した構造として、機能コアが導入されたシェルを持つ構造を提案した。この構造は様々なセラミックス材料においても展開可能であり、新たな耐環境セラミックスの創製につながることが期待できる。 高電磁場:高電磁場の印加によってもたらされる機能コアの生成と、それによる新たな機能発現に関して基礎データの収集を図り、定量的なデータの蓄積が進んだ。その結果、高速緻密化や高温変形の促進だけでなく、室温における擬弾性の発現など新たな現象も見出された。また高電磁場の波形・周波数と機能コア形成ならびに物質輸送制御についての基盤的知見の確立が進んだ。粒界・界面コア構造の実験および理論的評価・解析においては、蛍光発光の分光分析ならびにA02(ウ)班との連携により高電磁場下で製造した材料における粒界・界面コア構造の解析を継続した。
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Strategy for Future Research Activity |
高温酸素ポテンシャル勾配下:高温酸素ポテンシャル勾配下:耐熱性酸化物膜に対して、A01(ア)班、A02(ウ)班等との連携研究より、表面コアや粒界コアの形成により誘起される電気化学ポテンシャル障壁を利用した物質移動制御の可能性を追求する。また、粒内コアのナノドメイン構造とフォノン散乱の相関を明らかにすることにより、遮熱性向上のための粒内コア設計指針を示す。 高化学ポテンシャル溶媒下:高化学ポテンシャル溶媒(水熱・亜臨界・超臨界)中における物質の挙動や生成についてin-situ観察により挙動を解析し、機能コアの構築や耐環境セラミックス創製につながる知見を獲得する。対象として、高化学ポテンシャル溶媒中において利用可能なセメント材料候補であるリン酸カルシウム―アルミナセメントに加え、これまでに扱ってきたAl2O3やZrO2 、CaCO3等の物質系に展開し、耐環境材料として適した機能コア構築に関する学理の構築を目指す。 高電磁場:代表的な機能/構造酸化物であるAl2O3、Y2O3、ZrO2、ハイドロシキアパタイト多結晶体を用い、高電磁場下で形成される機能コアとしての点欠陥・チャージキャリア、それが関わる高温物質輸送や機械特性を、粉末成形体の緻密化挙動、微構造形成過程、ナノインデンテーションによる非破壊での弾性/擬弾性挙動解析、有限要素法計算を駆使した電磁場および温度分布調査をもとに解析・評価を進める。粒界・界面コア構造の観察・解析についてはA01(イ)班およびA02(ウ)班との連携を継続し、上記で得られた高電磁場下での機能コアと各種輸送現象との相関を明らかにする。
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Research Products
(56 results)