2020 Fiscal Year Annual Research Report
多細胞システムにおける細胞運動と運命決定の情報処理特性の解析
Project Area | Information physics of living matters |
Project/Area Number |
19H05801
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤井 哲 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20500367)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪股 秀彦 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (60372166)
中島 昭彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (90612119) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 入出力関係 / 細胞運動 / 細胞分化 / モルフォゲン / マイクロ流体デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞の移動、停止、浸潤、分化が、細胞組織中の複雑な場に含まれる情報のうち何を頼りに決定されているのかは、本領域が掲げる情報物理学の裾野をひろげる展開にとって重要である。本研究では、ごく微弱なケモカインの濃度差で細胞の前側と後ろ側が決定する細胞遊走と、モルフォゲンを頼りに、1細胞分の空間精度で細胞分化領域の境界が決定される細胞分化に注目する。細胞遊走については、その情報処理特性ごとの分類を視野に入れ、誘引因子の絶対濃度依存性として、いわゆるケモキネシス(ランダム運動の亢進)と相対濃度依存性としてケモタクシス(走化性)、走触性を見分けられるような、実験条件の確立を進めた。この問題を困難にしている理由の1つが、ケモキネシス効果を調べるような実験解析では必ず、刺激投入後の濃度変化への応答が混入しており、先行知見はこれを区別する解析が十分なされてこなかった。 そこで、細胞性粘菌の誘引分子である細胞外サイクリックAMP濃度の時間的、空間的変化にたいする過渡的応答から十分時間が経過した後について、細胞のランダム運動特性を解析するための灌流実験についてその条件出しをおこなった。予備的な結果から、cAMPの絶対濃度依存性は細胞側面から後端を特徴づけるミオシンIIとそれに架橋されたアクチンの分布と状態に大きく影響することが見られており、ミオシンIIならびにその調節因子の遺伝子改変株の作成を同時に進めた。また、好中球様HL細胞については、UV照射型のパターン化装置を前年度確立させたこと受け、フィブロネクチンの濃度勾配を形成させ、その運動バイアスが生じる条件を探索した。細胞間相互作用を制御するため、人工分子の設計および選定を行い、細胞間接着制御を微小化合物を用いて異なる細胞間で人為的に誘起できる系のゼブラフィッシュでの応用、さらに細胞性粘菌への適応をはかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞間接着と細胞運動について、その入出力関係を洗い出すため、代表者らが得意としてきた液性因子の時空間制御に加えて、細胞―基質、細胞―細胞間の近接シグナル、接着制御が進んでおり、一部はin vivoで作用することも確認できている。In vivoについては、当初計画のアフリカツメガエルに加え、遺伝的操作と可視化のしやすいゼブラフィッシュの導入も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
UV反応性のPEG分解剤を基質上に導入し、パターン領域にUVを照射することにより作成する基質接着因子の入力制御の系について、好中球様細胞は、昨年度までに細胞遊走の方向選択性をバイアスさせる接着条件を見出しつつあり、フィブロネクチン濃度勾配の条件を体系的に探索し、その以前性を解析する。さらに前年度導入が進んだゼブラフィッシュの系を活用し、ゼブラフィッシュから単離した神経堤細胞が遊走を示す培養条件を探索し、同様の定量的解析を可能とする系を開発する。具体的には神経堤細胞のマーカー遺伝子であるsox10プロモータかでGFPを発現するトランスジェニックゼブラフィッシュの12時間胚を機械刺激によって解離し、セルソーターによって分離回収した後に、sox10+が維持、培養できる培地、基質諸条件を体系的に探索する。また、好中球細胞を蛍光標識するLysC+マーカー遺伝子を組み入れたトランスジェニックゼブラフィッシュの分与を受け、同様の活用を可能とする飼養サイクルを確立する。これらの系をすすめることで、これまで粘菌や培養細胞に限定されていた細胞運動についての入出力関係のin vivoにより資する特徴付けの基礎とする。
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] Comparative mapping of crawling-cell morphodynamics in deep learning-based feature space2021
Author(s)
Daisuke Imoto, Nen Saito, Akihiko Nakajima, Gen Honda, Motohiko Ishida, Toyoko Sugita, Sayaka Ishihara, Koko Katagiri, Chika Okimura, Yoshiaki Iwadate, Satoshi Sawai
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Journal Title
PLOS Computational Biology
Volume: 17(8)
Pages: e1009237
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Book] 細胞の理論生物学2020
Author(s)
金子 邦彦, 澤井 哲, 高木 拓明, 古澤 力
Total Pages
352
Publisher
東京大学出版会
ISBN
9784130626217