2019 Fiscal Year Annual Research Report
超新星背景ニュートリノの高感度観測でせまる宇宙星形成の歴史
Project Area | Unraveling the History of the Universe and Matter Evolution with Underground Physics |
Project/Area Number |
19H05807
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関谷 洋之 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (90402768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 康雄 神戸大学, 理学研究科, 教授 (60272522)
伊藤 慎太郎 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(PD) (40780549)
鈴木 良一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 首席研究員 (80357300)
高久 雄一 公益財団法人環境科学技術研究所, 環境影響研究部, 研究部長 (40715497)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 宇宙史 / 超新星爆発 / ニュートリノ / 星形成 / 低放射能技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究において、硫酸ガドリニウム溶解後に水の光の透過率を保つことと、放射性不純物を低レベルに保つことが最大の関門であり、初年度にこれらを解決できることを示した。 まず、ガドリニウム水純化装置(SK-Gd水システム)のアップグレードを行なった。硫酸ガドリニウム水溶液を純化の手法するとして、硫酸イオンを保つことができるアニオン交換樹脂の開発を行い、テストベンチであるEGADS実験装置において、透過率の維持および238Uの除去性能を確認し、それをもとにした60m3/hの流量の循環純化システムを準備してきた。しかし更なる水透過率の安定化と一層の低バックグラウンド化を図るため、ガドリニウムイオンを保つことができるカチオン交換樹脂を、EGADSで水透過率と226Raの除去性能評価をした後、SK-Gd水システムへ導入した。そして実際にスーパーカミオカンデのタンク内の純水をこのアップグレードしたシステムで循環させた。2か月弱の運用で、タンク内の水の透過率が以前の純水装置と変わらないことが実証できた。さらに、この装置を120m3/hの流量に対応できるような増強も行った。 一方、導入する高純度硫酸ガドリニウムの準備を進め、導入するすべての硫酸ガドリニウムの製造ロットごとの放射性不純物量を評価し、すべて仕様を満たすことを確認した。 低ラドン化のための膜脱気システム及びラドン測定システムについて、メーカー技術者と打ち合わせを行った。ラドン測定システムについて、硫酸ガドリニウム水溶液に対応させるために、市販されている中空糸膜モジュール製品のハウジング部分の一部のステンレス化を行った。 検出器較正用電子加速器開発に関しては、Cバンド定在波型加速管を用いた極微弱電子ビーム加速器のシミュレーション・全体設計を行うとともに、電子加速器の前段加速部の高周波空洞等のコンポーネントの動作確認を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた通り、硫酸ガドリニウム水溶液循環システムの実証と低放射性不純物硫酸ガドリニウムの準備が完了したため。
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Strategy for Future Research Activity |
スーパーカミオカンデの水透過率の安定化と一層の低バックグラウンド化を図る。さらにラドンによるバックグラウンド削減のため本学術領域内計画研究D01と連携を進め、膜脱気装置の増強と硫酸ガドリニウム水中のラドンモニターシステムを整備する。透過率の安定化とラドンの影響を理解した上で、SK-Gd中のガドリニウム濃度を段階的に上昇させる。Gd2(SO4)3の製造ロット(1ロット=500kg)ごとに純度を評価していく必要がある。ICP-MSによるウラン、トリウム濃度のモニターや海外研究協力者とも連携してGe検出器による放射線不純物の量を把握をする。 一方、硫酸ガドリニウム導入後の物理解析も進める。大気ニュートリノによる中性カレント(NC)バックグラウンド(BG)の影響を正確に評価し、中性子数カットやトポロジーカット導入によるBG低減手法を開発する。蓄積されたT2K実験のデータから、中性弾性散乱と荷電準弾性散乱イベントにおける中性子数を比較することでエネルギー毎に中性数の期待値やそれの一次反応点からの飛行距離を検証する。大気ニュートリノNCイベントのエネルギー領域はT2Kイベントのエネルギーとほぼ一致しているので、ニュートリノ反応点から近くの一個の中性子しか作らない超新星背景ニュートリノ信号と、遠く飛ぶ 複数の中性子を伴う大気ニュートリノNCイベントとの識別を行う。 COVID-19の影響で、ガドリニウム導入が予定通り実施できない可能性があるが、その際には硫酸ガドリニウムの準備だけは進め、最初の導入時にSK-Gdのガドリニウム濃度を当初よりも高くすることで、予定していた感度を実現する。 電子加速器開発においては、加速管やクライストロン等のコンポーネントの動作確認を行うとともに、微弱電子加速のためのフォトカソード電子銃を試作し、加速器前段加速部の高周波空洞を用いた電子ビーム加速実験を行う。
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Research Products
(45 results)