2011 Fiscal Year Annual Research Report
卵子による核の初期化機構の解明およびその促進方法の開発
Project Area | The germline: its developmental cycle and epigenome network |
Project/Area Number |
20062015
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
若山 照彦 独立行政法人理化学研究所, ゲノム・リプログラミング研究チーム, チームリーダー (40360672)
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Keywords | 応用動物 / 再生医学 / 獣医学 / 畜産学 / 発生・分化 |
Research Abstract |
本研究は卵子による核の初期化機構の解明を目指すと同時に初期化の促進方法を開発し、体細胞核の完全初期化およびクローン動物特有の異常が生じない、正常な個体を高率に作出することを目指している。2011年度には1.我々が以前発見したHDACiによる初期化促進について、クローン胚にどの様な変化が生じているのか詳しく検討したところ、rRNAの転写効率が改善され、初期胚遺伝子活性が正しく行われる確率が高まることが明らかとなった(Bui 2011)。2.外見は正常でも出産に至るクローン胚と流産する異常胚を、蛍光プローブによりあらかじめ選別する手法を開発することが出来れば、移植後の産仔率が上がるだけでなく、異常な胚と正常な胚を比較することで異常の原因を突き止めることが可能となる。そこで我々は受精直後から桑実期胚までの72時間を生きたままダメージなしで蛍光観察する方法を開発し、この方法を用いてクローン胚の蛍光観察を行った。クローン胚の細胞数、細胞分裂速度、分裂同調性、染色体異常などを指標に外見は正常な桑実期胚を分類し移植したところ、もっとも出産に影響を与えていたのは染色体異常であり、イメージングによって正常胚だけを選ぶことで産仔率を大きく改善することに成功した(Mizutani2012)。3.従来の蛍光観察では水銀ランプを使用するため、ランプによるダメージが避けられない。そこで通常のハロゲンランプを用いて蛍光観察を可能にする方法を開発した。通常の顕微鏡に励起フィルターを接続するためのアダプターを取り付け、さらにアダプターに絞りをつけることで、励起フィルターの外側からハロゲン光が漏れこむようにすることで、1つの光源から蛍光像と明視野の同時観察も可能にした、その結果、家畜卵子のように核が全く見えない卵子でも、ハロゲンランプで核を見ながら除核出来るようになった。(Yamagata 2012)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終目標には到達のめどがついていないが、良好クローン胚の選別方法を選び出すことに成功し、またHDACiによる初期化促進理由の一部が明らかとなった。このように毎年確実に成果を出し前進していることから(2)という評価が妥当だと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
初期化促進方法に関しては、様々な視点から関係しそうな薬品を選び出し、実際に核移植を行って効果を確かめる。やや原始的な手法だが、核移植に効果があるかどうかは実際に試さなければわからない。そのためには、高度な核移植技術を有する者の育成が不可欠だが、最近の学生はこのような難しい技術を覚えようとしない。 良好クローン胚の選別方法は、技術的に可能であることを証明したが、その選別の指標となる項目数はまだわずかしか見つけ出せていない。確実な良好胚を選び出すためには、指標の数をもっと増やすことが不可欠である。イメージングは膨大なデータを伴うため、今後はコンピューターに詳しい研究者との共同研究を視野に入れた、自動解析ソフトの開発も必要だと思われる。
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Research Products
(17 results)