2011 Fiscal Year Annual Research Report
先端光電子分光によるf電子系化合物の高精度バルクフェルミオロジー
Project Area | Emergence of Heavy Electrons and Their Ordering |
Project/Area Number |
20102003
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
横谷 尚睦 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (90311646)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山上 浩志 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, グループリーダー (20239867)
関山 明 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 教授 (40294160)
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Keywords | f電子系化合物 / 重い電子 / 電子状態 / フェルミ面 / 量子臨界点 / バルク高精度光電子分光 / 角度分解光電子分光 |
Research Abstract |
本研究提案において我々はバルク高精度光電子分光により、f電子系化合物のフェルミ面や電子構造の温度依存性さらには超伝導や磁性転移等による特徴的な電子構造を観測することにより、f電子系化合物における重い電子状態の形成および超伝導と磁性等の共存の機構解明を目的とする。本年度の主な研究成果を以下に示す。(1)URu_2Si_2の隠れた秩序状態の起源を調べる為に、ヨーロッパの放射光施設において高分解能角度分解光電子分光を行った。隠れた秩序相転移温度以上において非常に幅の狭いバンドの観測に成功した。その温度変化から、転移温度以下におけるギャップの形成を観測した。加えて、ブリルアンゾーンの対称性の高い点における測定結果とその温度変化の比較から隠れた秩序相の秩序ベクトルを示唆した。(2)CeIrIn_5においてCe 4fの遍歴/局在性を再評価するため、軟X線角度分解光電子分光を行い、3次元フェルミ面形状をほぼ決定することに成功した。Ce4f電子がより局在的なCeRhIn_5がLaRhIn_5のバンド計算で得られるフェルミ面によく対応するのと異なり、CeIrIn_5はCe 4f電子を遍歴的に扱ったバンド計算によるフェルミ面が良く対応した。また共鳴角度分解光電子分光から4f電子が本質的に寄与するネットワーク型フェルミ面の存在を明らかにした。(3)Yb系化合物の電子構造を系統的に理解するために、軟X線角度分解光電子分光を用いて重い電子系物質YbRh_2Si_2と価数揺動物質YbCu_2Si_2のバンド分散及びフェルミ面を特定した。特にYbRh_2Si_2については、価数揺動状態にあり、Yb 4fバンドと伝導バンドとの間の混成があることを実験的に明らかにした。この結果は、この物質の量子臨界点近傍での物理を説明する機構として考えられてきたKondo-breakdown描像を否定する。YbRh_2Si_2の硬X線光電子分光ではYb価数が低温で3+からはずれ明らかに価数揺動状態にあり、この系の量子臨界現象が価数揺らぎに起因することを強く示唆することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高純度単結晶試料のバルク高精度光電子分光研究から、Ce系およびU系においてはf電子の遍歴-局在性や重い電子状態の形成に関する直接的な知見、Yb系においては量子臨界性の起源や機構につながる結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度においては、平成23年度の研究を発展的に継続する。
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Research Products
(38 results)