2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Optical science of dynamically correlated electrons in semiconductors |
Project/Area Number |
20104008
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小川 哲生 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50211123)
|
Keywords | 半導体レーザー / 動的相関電子系 / ポラリトン凝縮 / 電子正孔液滴 / 半導体マクスウェル・ブロッホ方程式 / 超蛍光 / 光子統計 |
Research Abstract |
昨年度の成果をさらに拡張し,1.動的相関半導体レーザーの半古典理論を用いた新しい光学利得発現,2.動的相関半導体レーザーの非平衡定常状態の安定性,3.励起子ポラリトン凝縮と半導体レーザー動作とのクロスオーバー理論の構築,4.バンド縮退半導体での電子正孔液滴の理論の再構築,5.双極子相互作用する二準位原子集合系での超蛍光における光子統計の評価に取り組んだ。 1.上海応用物理研究所のHuai教授との共同研究をさらに進め,昨年度に定式化した半導体レーザー理論を用いて,低温での新しい光学利得発現機構を研究した。電子と正孔のコーパーペアリング不安定性に起因する「ファノ共鳴利得」が生じ,半導体レーザーの動作が通常とは異なる。AO2班の秋山研究室(東京大学)および横山研究室(東北大学)での実験結果との比較を行い,理論の改良を進めた。2.発振閾値以上での非平衡定常発振状態の安定性を考察し,レーザー動作とキャリア間相互作用との関連を明らかにした。3.擬熱平衡状態での励起子ポラリトン凝縮状態と,非平衡定常系でのレーザー発振状態とのつながりを解明するために,クロスオーバー理論を開発した。4.バンド縮退度が大きな半導体では,励起状態で電子正孔液滴が生じる。小さな液滴と大きな液滴に対する理論を補完するため,中間サイズの液滴を取り扱うことのできる理論を開発した。5.半導体レーザーの発振閾値以下での光コヒーレンス形成では,協同的自然放出過程が重要である。そこで,超蛍光と増幅自然放出との違いを明らかにするため,まずは単純な「相互作用する二準位系モデル」での光のコヒーレンス形成を考察した。生じる光の光子統計性を解明した。半導体レーザー版に拡張する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
半導体レーザーの動的電子相関理論の構築には,物質系の反転分布状態(電子正孔系)と光との結合状態(ポラリトン多体系)の理解が重要である。その際に,擬熱平衡状態であるポラリトン凝縮と非平衡定常状態であるレーザー発振との類似や違いを明らかにすることが重要である。しかし,これら両者の関連を考察できるメタ理論は存在せず,それぞれを別々に記述する理論研究しか進んでいなかった。本年度,両者を解として包含するクロスオーバー理論を世界で初めて構築することができた。キャリア間相互作用をハートリーフォック近似であつかっているものの,外界との結合を非マルコフ近似で取り扱うことが肝要で,この理論を用いて,新しい半導体レーザー発振状態を詳しくかつ発見的に研究することができる。半導体レーザー理論およびポラリトン凝縮理論の両方の分野に対して非常に大きなインパクトがある進展である。
|
Strategy for Future Research Activity |
ポラリトン凝縮とレーザー発振過程とのクロスオーバー理論を最大限に活用し,新しい半導体レーザー発振状態の発見,ポラリトン凝縮を用いたレーザー発振などの研究を進める。数値計算が主となるが,計算機環境は十分に備わっているので問題はない。むしろ,人的リソースが問題となり得る。博士研究員だけでなく精選された大学院生らとも一緒に最終年度の研究を推進する予定である。
|
Research Products
(26 results)