2011 Fiscal Year Annual Research Report
温度応答性インターフェースの創成と生体分子認識制御
Project Area | Molecular Soft-Interface Science |
Project/Area Number |
20106004
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
菊池 明彦 東京理科大学, 基礎工学部, 教授 (40266820)
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Keywords | 原子移動ラジカル重合 / ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) / ポリマーブラシ / 疎水性相互作用 / 固定化金属イオンアフィニティ / モノリスシリカ / 生体分子 / 分離 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度までの研究結果に基づき、次の3点に関し研究を展開した。すなわち、1)疎水性基を導入した温度応答性中空キャピラリーによる疎水性物質の分離に与える表面構築条件の影響、2)固定化金属イオンアフィニティーリガンドを導入した温度応答性キャピラリーの調製、3)温度応答性モノリスシリカカラムの調製と生体分子との相互作用、である。1)では、疎水性のブチルメタクリレート(BMA)をわずか1mol%導入しただけで、モノマー濃度、重合時間の延長とともに32℃以上での疎水性相互作用が大きくなることが明らかになった。モノマー濃度、重合時間に伴う鎖延長と,高温での脱水・凝集力の違いが強く影響したものと考えられる。さらに、分離時の流速やカラム温度のステップ状変化を適用すると、疎水性度の異なるステロイド類を効率的に分離できることを明らかにした。2)では、重合反応時のモノマー組成を変化させ、固定化金属イオンアフィニティーリガンドの導入位置を制御した表面設計を行った。重合初期にリガンドが多く導入された表面では、35℃でタンパク質との相互作用が起こるのに対し、重合後期にリガンドを導入すると、10℃でタンパク質との相互作用が大きくなった。このとき、タンパク質と相互作用した表面で、温度を下げる、またはあげると、吸着したタンパク質の50%以上が温度変化に伴うポリマー鎖の伸長・凝集変化のみで脱着できることが明らかになった。この結果は、競合剤を用いることなく、温度変化のみで特定のタンパク質の吸・脱着を可能とする表面を設計する上で重要な指針である。最後に、3)では、キャピラリー内にシリカモノリスを調製後、温度応答性ポリマーブラシの調製を行った。わずか10cmというカラム長で、1mの中空キャピラリーよりも優れた性質を発現することを明らかにした。これらの結果を基に、次年度は表面物性の分光学的解析も進め、ソフト界面の意義を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で検討しようとしている種々基板表面におけるN-イソプロピルアクリルアミドの重合反応の制御が順調に進んでおり、着実に表面とタンパク質や低分子生理活性物質との相互作用に関するデータを得ている。それらのデータを元に温度応答性ソフト界面の特性が明らかになりつつある。これらの成果は学会発表等で、順次公表してきている。以上のことから、当初の研究の目的を順調に達成してきていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
毛細管であるシリカキャピラリーの内表面に修飾したポリマーの特性を調べるために、これまでは生体分子等との相互作用を用いていたが、実際に表面のポリマーが水中でどのような物性を示すのかを分光学的に明らかにすることが今後の課題である。本研究者の所属機関、ならびに物質・材料研究機構の研究者らと共同研究を展開することで、これらの解析が可能になりつつある。したがって、次年度において、これらの検討を行っていく。さらに、種々生理活性物質との相互作用から、どのような分子の相互作用制御が可能かを明らかにしていく。
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Research Products
(27 results)