Research Abstract |
カチオン性高分子ブラシのナノ構造とその転移について詳細な調査を行った. 用いたポリマーは, ポリイソレンと四級化ポリビニルピリジンのジブロックコポリマーで, リビングアニオン重合により合成した. 種々の鎖長, 鎖長比のポリマーを合成したが, 疎水差の重合度約100, 親水鎖の重合度約50のものが安定な水面単分子膜を形成することが分かり, 主としてこの系について系統的なπ-A測定およびX線反射率(XR)測定を行った. π-A曲線はなめらかに上昇し, 均一な単分子膜形成が確認された. また, 塩の添加により, 低面積側へシフトしたことから, カチオン性ブラシ鎖間の静電斥力が寄与していることを確認した. XR曲線には, 明瞭なKiessigフリンジが観察され, 平滑かつ均一な単分子膜が形成されていることが分かった. 膜を圧縮して表面圧を上げながら, すなわちブラシ密度を増加させながらXR測定を行ったところ, 低表面圧条件では, 親水鎖は絨毯層のみを形成し, 高表面圧では, 絨毯層の下に, ブラシ層が形成されることが分かった. すなわち, 構造転移を起こす臨界ブラシ密度がこの系に関しても確認された. したがって, 絨毯層の形成と絨毯層のみ/絨毯層+ブラシ層の構造転移は, アニオン, カチオンを問わず, イオン性高分子ブラシに対して普遍的なものであることが明らかとなった. また添加塩として, NaClを添加すると, 表面圧は減少し, ブラシ鎖の収縮が観察された. すなわち, 一定塩濃度まで構造が変化しない, 臨界塩濃度はこの系に関しては観察されなかった. これは, ピリジン環の四級化度が56%程度と低いことに起因していると考えられる. 臨界ブラシ密度が, 0.4程度と, ポリスチレンスルホン酸の0.1程度より大きく, ポリアクリル酸の値に近いことからも, 支持される.今後は, 四級化度のより高い高分子を合成し, より詳細な検討を行う予定である.
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