Research Abstract |
カチオン性高分子ブラシのX線反射率によるナノ構造とその転移に関する解析を精力的に行った.新たに導入したRAFT重合法により,四級化アンモニウムカチオンを有するQBmとn-ブチルアクリレートのジブロックコポリマーを合成し,水面上に単分子膜を形成させ,その中のカチオン性ブラシの構造解析を行った.まず,表面圧-面積曲線(π-A等温線)の測定を行ったところ,意外にも,大面積領域から,表面圧πの上昇が見られ,その後,かなり広範囲にわたるプラトー領域を経て,第2の上昇が見られた.第2の上昇領域は,以前検討を行ったアニオン性ブラシとほぼ等しく,ブラシ形成によるものと考えられた.新たに発見された第1の領域は,均一に単分子膜を形成する前に,島状のドメイン構造を取るためと考えられ,ブリュースター角顕微鏡(BAM)による観察を行ったところ,数10ミクロン程度のドメインが観察された.後述のベタインポリマーでも同じ疎水鎖では同様の傾向が観察され,n-ブチルアクリレートを疎水鎖とした場合の特性と考えられる.メチル基の一つ多い,n-ブチルメタクリレートでは,そのような傾向は見られておらず,このドメイン形成機構の検討を今後進める必要がある. カチオン性ブラシのナノ構造に対する添加塩の効果をXRにより検討した.アニオン性ブラシ同様,臨界塩濃度の存在が確認されたが,その濃度は0.02M程度と,アニオン性の場合より一桁低い値となった.我々の従来の解釈によると,これは98%という非常に高い対イオン固定が起きていることを意味する.四級化アンモニウムカチオンの特性である可能性があり,今後の課題である. ベタインを親水鎖としたポリマーを用いて,ベタインブラシの検討を行った.アニオンとカチオンを分子内に併せ持つ両性イオンであるベタインは,予想通り,その構造が添加塩に対し非常に鈍感であり安定であることが確認された.
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