2011 Fiscal Year Annual Research Report
高分子ブラシの機能と近傍の水の動態との相関に関する研究
Project Area | Molecular Soft-Interface Science |
Project/Area Number |
20106007
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
北野 博巳 富山大学, 大学院・理工学研究部(工学), 教授 (40115829)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
源明 誠 富山大学, 大学院・理工学研究部(工学), 助教 (70334711)
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Keywords | 高分子ブラシ / 双生イオン型高分子 / 和周波発生分光法 / O-H伸縮振動 / 水の構造 / 表面開始ATRP |
Research Abstract |
本年度、物質材料研究機構の魚崎教授、野口秀典准教授との共同研究により、双性イオン型高分子ブラシ近傍の水を和周波発生(Sum Frequency Generation, SFG)法により調査した。カルボキシベタイン型の単量体を、表面開始原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization, ATRP)により半円筒型の溶融石英の平坦面にブラシとして導入したところ、未修飾の溶融石英表面、ATRP開始剤自己組織化単分子膜(Self-assembled Monolayer, SAM)修飾石英表面と比較して、O-H伸縮振動に由来する3000-3600cm^<-1>付近のSFGのシグナル強度の大幅な低下が観測された。未修飾の石英表面ではシラノール基と水素結合した水が、またATRP開始剤SAM修飾石英表面では疎水性水和した水が、いずれも配向して広がっているものと考えられる。一方、双性イオン型高分子ブラシの場合には、その何れよりも配向が抑えられた水が界面に存在することを示している。さらに、双性イオン型高分子ブラシの長さを増加させたところ、配向した水に由来するシグナル強度が若干減少することが判明した。メタクリル酸や三級アミンを側鎖に有する高分子ブラシ系では、静電水和した水の層が存在することがこれまでに見いだされている。このことを踏まえうと、双性イオン型高分子ブラシを修飾した溶融石英表面では、高分子と水との間の水素結合や静電相互作用、疎水性水和に由来する水分子の配向の程度が小さく、水の構造が大きくは乱されていないことを示唆しており、これまでにRaman散乱法で得られた水溶性高分子溶液系、赤外法で得られた高分子薄膜系における測定結果とよい一致を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
双性イオン型、さらには正あるいは負電荷を側鎖に有する単量体を等量含む両性高分子ブラシは、タンパク質・細胞の非特異的吸着・付着に対する高い抑制効果を有する。これらのブラシ近傍の水のO-H伸縮振動に由来するSFGシグナルが、担体表面や正あるいは負電荷のみを有するブラシ近傍の水のシグナルと比較して強度が小さいことから、電荷中和により近傍の水の構造を擾乱させないことが、生体適合性の発現に重要であることを見いだし、主たる研究目的を達成しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、医用材料に多用されている双性イオン型単量体を含む共重合体薄膜近傍の水の構造をSFG法により検討し、上記の知見の普遍性を検証する計画である。
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