2011 Fiscal Year Annual Research Report
半導体/生体分子ナノ界面の構築と遺伝子トランジスタへの応用
Project Area | Molecular Soft-Interface Science |
Project/Area Number |
20106013
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
宮原 裕二 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (20360399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
合田 達郎 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (20588347)
松元 亮 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (70436541)
前田 康弘 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (90574939)
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Keywords | 動的ナノ界面 / コンカナバリンA / トランジスタ / 含水率 |
Research Abstract |
バイオトランジスタにおいて、デバイ長による検出距離の制限を克服し、生体分子を高感度かつ定量的に検出するための「信号変換伝達素子」たる動的ナノ界面の創出に取り組んでいる。マンノースモノマー(α-Mannoside;αMan)含有率の異なるプレゲル溶液を調製し、ジメチルアクリルアミドを主骨格とするキャピラリーゲルを熱重合により合成した。αMan 含有量が3mol%と低いゲルにおいては、コンカナバリンA(Con A)に浸漬後、経時的な重量増加(含水率増加)が観測されたのに対し、20mol%と高いゲルでは、一時的には重量が増加するものの、やがて減少し、最終的には初期状態よりも含水率が減少することが観測された。前者では、レクチン糖複合体(1対1)形成によりゲルの浸透圧増加が支配的因子として作用するものと考えられる。一方、後者では糖の含有量が高いため、徐々に結合比(1対2)が変化する物理架橋点形成の効果により収縮に至ったものと考えられる。このように、糖の含有量を調整することで、ゲルの膨潤収縮の方向を自在に制御できることが明らかとなった。次に、FETゲート表面に厚さ50micron の20mol%ゲルを光重合形成し、Con A添加前後におけるしきい電圧変化を評価した。しきい電圧は、(i)添加直後急激に上昇し、(ii)一旦減少したあと、(iii)再び上昇するという挙動を示した。Con A(pI=6-7)は負電荷を帯びていると考えられ、これらを総合すると、重量測定の結果から予測されたゲルの動的挙動(膨潤収縮)と矛盾しない結果となった。すなわち、(i)レクチン–糖複合体(1対1)形成によるゲルの負帯電、(ii)浸透圧増大によるゲルの膨潤、そして(iii)結合比変化(1対2)にともなう物理架橋点形成による収縮という過程をリアルタイムに可視化する原理証明を得たものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FET法の最大の弱点の一つに、その短い検出距離制限が挙げられる。例えば、抗原・抗体のような巨大分子、また、40塩基以上の比較的長鎖のDNAを検出対象とした場合には、その定量性が著しく低下する。これには溶液/ゲート絶縁膜界面の電気二重層の幅(デバイ長)が関係している。抗体分子の典型的な大きさは約10nmであるのに対し、生理的塩濃度溶液中でのデバイ長は1nm程度である。したがって、抗体をゲート絶縁膜表面に固定化した場合、溶液中の抗原は電気二重層の外で抗体と結合することとなり、その結果、抗原の電荷は対イオンにより遮蔽され、FETによる検出は原理的に困難となる。今までに得られた結果は、生体分子検出デバイスとしてゲート表面にスマートゲルを固定化したFETセンサの有効性を示しており、加えて、真に、「デバイ長フリー」に(大きな)生体分子を定量的に検出した初めての例として注目される。
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Strategy for Future Research Activity |
フェニルボロン酸(PBA)を含有した糖応答型の高分子ゲルならびにマンノースを側鎖に導入したレクチン応答性の高分子ゲル(いずれもアクリルアミド誘導体ゲル)を用いた評価を行い、各々ターゲット補足に伴うゲート電極/高分子ゲル界面での含水率変化に同期した誘電率変化を信号変換機序とすることで、これら電気的に中性な分子ならびにデバイ長よりも大きな分子サイズを有するタンパク質の検出が可能となることを実証してきた。これらの成果を踏まえ、「架橋されていない直鎖(リニア)ポリマーを検出界面とした場合にも同様の機序が成り立つ」ことを実証するべく詳細な検証を行う。三次元的に架橋されたゲルにおいては、その膨潤(収縮)過程が高分子編み目の協同拡散に束縛されるため、ゲル層の厚みに依存してその応答時間が著しく遅くなるが、架橋構造を取り除いたリニアポリマーではこれが回避される。また、リニアポリマーを利用して(上記機序による)検出プラットフォームが確立されれば、バイオトランジスタの適応対象を飛躍的に広げることが出来ると考えられる。
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Research Products
(9 results)