2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜及び人工膜の揺らぎが関与する制がん機能メカニズム
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
20107007
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
上岡 龍一 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (70099076)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 浩一 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (30279377)
黒田 玲子 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (90186552)
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Keywords | リポソーム(複合脂質膜) / 癌 / 細胞膜 / 揺らぎ / アポトーシス |
Research Abstract |
1.リン脂質(DMPC)およびPEG系界面活性剤(C_<12>(EO)_n,n=23)からなるハイブリッドリポソーム (HL-23)を用い、ヒト前骨髄性白血病(HL-60)細胞に対するアポトーシス誘導へのラフトの関与についてin vitroで検討した。HL-23を添加すると、HL-60細胞膜の流動性を増大した。蛍光脂質含有HL-23は、短時間でHL-60細胞膜に集積することが分かった。さらに、HL-23は、白血病細胞に対して、細胞膜上で脂質ラフトのクラスターを形成し、アポトーシスシグナル伝達を活性化させることが初めて明らかになった(Chem.Lett.,39,1291(2010))。 2.HL-n(n=21,23,25)の細胞膜をターゲットとする制がん機構について検討した。HL-nは、種々のがん細胞に対して顕著な細胞増殖抑制効果を示し、アポトーシスを誘導することをin vitroで明らかとした。さらに、HL-nは膜流動性の大きながん細胞に選択的に融合蓄積した。がん細胞膜の流動性とHL-nの制がん効果との間に相関性が認められ、「がん細胞膜の揺らぎが制がん効果に関与する」ことを初めて明らかにした。以上のことより、がん細胞膜をターゲットとする新しいHL-nのがん治療に向けて一般化が期待できる(ACS Med.Chem.Let.,2,275(2011))。 3.HL-23に抗生物質のゲンタマイシン(GM)を封入したGM-HLを創製し、新しい筋ジストロフィー治療を検討した。筋ジストロフィーモデル(mdx)マウスの体内動態観察において、骨格筋の炎症部位へのHLの蓄積を確認した。また、mdxマウスを用いたGM-HLの治療実験において、GM-HLの高い治療効果が確認され、mdxマウスへのGM-HLの副作用はみられなかった。GM-HLは、新しい筋ジストロフィー治療薬として期待できる(Biol.Pharm.Bull.,34,712(2011))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HLの流動性(揺らぎ)とがん細胞膜の流動性(揺らぎ)が、HLの抗腫瘍効果に密接に関連することが明らかになってきている。領域内の有機的なつながりによる医学部との活発な共同研究(岡田、鈴木ら)で、種々のがんに対する制がん効果に関する応用研究がおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
HLの流動性(揺らぎ)およびがん細胞膜の流動性(揺らぎ)と、HLの抗腫瘍効果に関する多くの事例を増やし、一般則として確立する予定である。詳細なメカニズムについては、がん細胞およびHLの流動性を、様々な分析法により計画班員(片岡ら)との共同研究で明らかにする事が可能である 計画班員の平田らの一般化ランジェヴァン理論と3D-RISM/RISM理論を結合した新たな計算科学的手法を、膜の揺らぎと抗がん作用との問題に応用し、揺らぎの観点から医科学の問題に取組む。がん細胞膜に人工膜であるHLが特異的に融合するプロセスなどの計算科学的手法などを用いた物理化学的解明を進める。
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