2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Emergence of highly elaborated pai-space and its function |
Project/Area Number |
20108005
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
櫻井 英博 分子科学研究所, 分子スケールナノサイエンスセンター, 准教授 (00262147)
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Keywords | スマネン / アザスマネン / キラリティ / ボウル反転 / ラセミ化 |
Research Abstract |
本研究は、フラーレン部分骨格やナノチューブの先端構造に相当する、お椀型π電子系化合物「バッキーボウル」を足がかりとした、精密有機合成の手法を駆使したカーボンπ空間の構築法の確立を目指している。これまで提案・実現してきたバッキーボウル分子の革新的な合成戦略を更に推進し、多種多様なπ曲面を有するバッキーボウルを自在に合成する。同時に、バッキーボウルをモジュール分子として高次に組み合わせることにより、原子レベルでの精密且つ高効率なカーボンπ空間構築法を開拓する。 今年度の最大の成果は、これまでに達成されていなかった含窒素ヘテロバッキーボウルであるトリアザスマネンの合成を完成したことである。バッキーボウルの炭素骨格の一部を窒素に変換したアザバッキーボウルは、その構造および物性に注目がもたれており、古くから合成が試みられてきたが、その大きな湾曲性と歪みにより、未だに達成されていなかった。我々のスマネン合成で確立されてきた、飽和結合を利用した3次元おわん骨格構築法を駆使することにより、それらの問題点を解決し、初めての合成に成功した。トリアザスマネンは対応するスマネンに比べ、おわんの深さは0.2Aほど深く、そのためバッキーボウルの特徴のひとつであるボウル反転障壁はスマネンと比較して非常に大きくなっている。トリアザスマネンはキラリティを有しているため、ボウル反転がラセミ化過程に相当し、キラルHPLCによりラセミ化速度を測定することでボウル反転エネルギーも算出でき、その結果約40kcal/molと極めて大きな値(スマネンは約20kcal/mol)であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで長年の解決課題のひとつであった含窒素バッキーボウルであるアザスマネンの合成に世界に先駆けて達成したことは、評価すべき達成と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回合成に成功した含窒素バッキーボウルや、多置換スマネンの合成技術を基礎に、π空間の創成に貢献できるシステムの構築を完成していきたい。合成研究は時としてマンパワーが重要であり、学生の少なさが時として問題になるが、幸いにして、現在当該研究を担当している大学院生の成長著しく、充分にカバーできると確信している。
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