2011 Fiscal Year Annual Research Report
自己集合性ポルフィリンによる高次π空間の創出と機能性π複合体の構築
Project Area | Emergence of highly elaborated pai-space and its function |
Project/Area Number |
20108009
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷 文都 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (80281195)
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Keywords | ポルフィリン / フラーレン / π空間 / ナノチューブ / 自己集合 / 超分子 / 電荷分離 / 電荷移動度 |
Research Abstract |
本研究では、自己集合性のポルフィリンが与える高次のπ空間にフラーレンなどのπ系分子を包接・配列させることによって、新規の機能性π複合体を構築することを目的としている。これまでピリジル基を導入した環状ポルフィリン二量体のニッケル錯体(Ni_2-CPD_<Py>)およびフリーベース体(H_4-CPD_<Py>)とフラーレンC_<60>のπ複合体について、原子レベルでの超分子構造、光化学ダイナミクス、C_<60>の規則的な配列に沿った比較的高い電荷移動度、光電変換特性などを明らかにしてきた。 当該年度は、適用するフラーレンの種類を拡張するため、C_<60>に次ぐ代表的なフラーレンであるC_<70>のH_4-CPD_<Py>に対する包接挙動について調べた。溶液中では、^<13>C-NMRスペクトルの結果から、横向きの配向で包接されていることがわかり、また、結晶中においても、横向きの配向で包接されていることが確認された。C_<70>がNi_2-CPD_<Py>に包接される際は、昨年度に明らかにしたように、溶液中、結晶中の両方において、横向きと縦向き配向の両者が存在することと好対照の結果となり、これらをまとめて、日本化学会の学術誌で報告したところ(Bull. Chem. Soc. Jpn., 84, 1321, 2011)、当該雑誌12月号の最優秀論文と認められ、BCSJ賞を受賞した。 さらに、有機太陽電池の電子アクセプターとして最も頻繁に使用されるPCBM(Phenyl-C_<61>-butyric acid methyl ester)とNi_2-CPD_<Py>の複合体の結晶構造を調べた。C_<60>とNi_2-CPD_<Py>の複合体の結晶構造と同様に、Ni_2-CPD_<Py>の自己集合によって作られるナノチューブの内部空間にPCBMが包接され、直線的に配列した「超分子ピーポッド」が形成されていた。この結果から、Ni_2-CPD_<Py>は自己集合によって、ナノチューブを形成し、適当なフラーレンを直線的に配列させる有効な構成要素であることが改めて確認された。 C_<60>やC_<70>の包接を高めることをねらいとして、ポルフィリン中心間距離を伸長するために、アントラセンやフェノチアジンなどの架橋基を用いた新規二量体を合成した。これらの新規二量体では、当初のねらい通り、C_<60>やC_<70>の結合定数が従来の二量体に比べて、10倍以上向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目的である、ポルフィリンの自己集合によって高次π空間を構築すること、および、機能性π複合体を構築することの2点について、実績の概要の欄に述べたように、新しい成果が得られ、その発表論文も良好な評価を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに合成したポルフィリン-フラーレンの機能性π複合体は、興味深い結晶構造を示すが、実用化により近づくデバイス化への検討を進める方策である。また、新しい自己集合性ポルフィリン二量体の合成に成功し、多種類の複合体も調製できるようになってきたので、これまで同様に、その超分子構造、光化学ダイナミクス、光電変換特性などの解明を積極的に進める。
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