2011 Fiscal Year Annual Research Report
「海底下の大河」における物理・化学環境と微生物活動の相互作用:現場環境での素過程
Project Area | Project TAIGA: Trans-crustal Advection and In-situ biogeochemical processes of Global sub-seafloor Aquifer |
Project/Area Number |
20109005
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
高井 研 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, プログラムディレクター (80359166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 嘉夫 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10304396)
山中 寿朗 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (60343331)
土岐 知弘 琉球大学, 理学部, 助教 (50396925)
中川 聡 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (70435832)
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Keywords | 熱水循環 / 海底下の大河 / 酸化還元状態 / 生物地球化学 / 素過程 |
Research Abstract |
本研究の目的は、典型的な「海底下の大河」(以下「大河」)における様々な段階・領域の物理・化学環境と微生物活動の相互作用を解き明かし、生物地球エネルギー・物質循環の全体像を紐解く鍵を与えると共に、熱水循環場の時空間的な拡がりや変遷過程の理解の中心的基礎を築くことである。 平成23年度には、沖縄トラフ「メタンの大河」の河口域における(微)生物-物理化学因子の相互作用についての調査航海(2011年8月、9月、2012年3月)、深海掘削船「ジョイデスレゾリューション」を用いた10DP大西洋「鉄の大河」の流域の掘削航海(2011年9月)が行われた。沖縄トラフの「メタンの大河」については、昨年度には、これまでの熱水域やその周辺部の調査航海やその研究の成果として、「沖縄トラフ熱水中に含まれるメタンが、熱水近傍の熱水循環系において、有機物の熱分解や好熱性メタン菌による微生物活動によって生成されたものではなく、むしろ熱水活動域から数10kmも遠く離れたトラフ堆積物の深部で微生物共栄養によって生成されたものであり、そのメタンが全大河流域での微生物や生物の活動の重要なエネルギー・炭素源となっている」という全く新しい「広域的な海底下の大河」構造モデルを論文として発表するに至った。今年度には、新たな熱水活動域の熱水化学組成や同位体化学特徴、周辺微生物群集の存在様式に関する新たな知見を加える事により、そのモデル化をさらに推し進め、沖縄トラフの「メタンの大河」のみならず、世界的な「メタンの大河」における「広域的な海底下の大河」構造モデルを構築した。また2010年に行われた掘削航海の掘削後調査によって、「海底下熱水溜まりにおける熱水化学組成の空間的不均一性と熱水鉱床成因」に対する画期的な成果を得る事ができた。その他、マリアナトラフや大西洋における「鉄の大河」における鉄依存型の微生物生態系の存在を明らかにするなど、「メタンの大河」を含む4つの大河モデルにおける成果を着実にあげる事ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した各調査研究での達成度を十分満たしただけでなく、世界的な「メタンの大河」における「広域的な海底下の大河」構造モデルを構築したり、予想外の成果である「海底下熱水溜まりにおける熱水化学組成の空間的不均一性と熱水鉱床成因」に対する重要な知見を得る事できたり、当初の計画を上回る成果が上がってきているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は研究計画最終年度であるが、いくつかの「海底下の大河」研究領域に関連する調査航海が行われる。特に中央インド洋海嶺「水素の大河」および「イオウの大河」の河口域における(微)生物-物理化学因子の相互作用についての調査航海(2013年1月-2月)では、「水素の大河」における微生物-物理化学因子相互作用のモデル化を完成させたい。「メタンの大河」に関してはほぼ確立できており、「イオウの大河」、「水素の大河」および「鉄の大河」においても今年度には出来上がる見込みである。そしてこれまでの研究計画で得られたすべての結果を総合して、大河モデルの仮説検証を進めてゆくとともに、成果の取りまとめ及び発信を強力に進めてゆく。
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Research Products
(52 results)