2010 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属酸化物ナノ構造体における階層を越えたプログラム自己創発化学
Project Area | Emergent Chemistry of Nano-scale Molecular System |
Project/Area Number |
20111005
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川合 知二 大阪大学, 産業科学研究所, 特任教授(常勤) (20092546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 裕行 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (20314429)
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Keywords | 遷移金属酸化物 / ナノワイヤ構造 / 創発化学 / 高次ナノ構造 / 気液固反応法 |
Research Abstract |
気-液-固相(Vapor-Liquid-Solid : VLS)反応法を用いて階層構造を有する金属酸化物一次元ナノ構造体を作製した。着目するのは三相に跨る物質移動現象の動的非平衡プロセス(非平衡定常状態)であり、プロセスにおいて意図的に外部刺激を加えることによって結晶成長面である固液界面に揺らぎを導入し階層構造を創発することを試みた。具体的にはVLS結晶成長過程において外部刺激として不純物ドーピング、雰囲気圧変調、温度変調等を導入し、その刺激に対する階層構造への影響を検討した。構造評価を電子顕微鏡及び4軸X線回折により行った。材料系として酸化錫ナノワイヤへSb及びTa等のドナーを不純物ドーパントとして導入した系を取り上げた。更に、領域内の理論班(九州大学甲斐研)と共同で発現する創発現象を分子動力学理論計算により原子レベルから解明することを試みた。その結果、理論が定性的に予測するように不純物ドーパントの蒸気圧に対応してナノワイヤ中の不純物ドーパント空間分布が系統的に変化することを見出した。具体的には、不純物ドーパントの蒸気圧がナノワイヤ構成原子よりも著しく低い場合、ナノワイヤ表面に選択的に分布するナノ構造体を自発的に形成する。また均一な不純物ドーピングを実現するためには、ナノワイヤ構成原子と不純物ドーパント原子の蒸気圧を同程度に設計することが本質である。これらの結果は、従来は完全に経験的に探索されていたVLSナノワイヤへの不純物ドーピングプロセスに普遍的な材料設計指針を与える極めて重要な知見であり、今後は更にこれらの相互作用の背後に潜む創発メカニズムを理論班との共同研究を介して理論的・実験的に解明することが鍵となる。このように実験的な検証に理論的な考察を加味することにより、現在、VLS結晶成長過程における創発現象を体系的に解明しつつある。
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