2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Emergent Chemistry of Nano-scale Molecular System |
Project/Area Number |
20111007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 誠 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授 (90209065)
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Keywords | 創発化学 / 自己集合 / 配位結合 / 多成分 / 有機金属錯体 / 球状錯体 / ピリジル基 / パラジウム |
Research Abstract |
本研究は、単純な数十~数百個の構成成分から一義構造ナノスケール物質群の構造と機能を創発し、本領域研究の基盤技術を確立することを目的とする。自然界では数百にもおよぶ成分から安定な一義構造が自己集合するのに対し、人工系では10-30成分の一義構造自己集合が達成されているにすぎない。そこで、この壁を超える手法として「配位結合を活用する自己集合」に着目し、30成分を超える自己集合による一義構造を持つ分子の構築法の開発と、自己集合機構の解明をめざす。 本年度、36成分からなる球状錯体の配位子交換反応速度を指標とした、錯体の安定性の評価を行った。再現性の確認や追加測定を行う事により、多成分からなる自己集合性錯体は、弱い結合の協同的な効果によって非常に安定化されていることを明らかにし、論文発表に至った。 これまでに、数成分からなる単核錯体では配位結合が、非常に速い解離と結合の平衡状態にあることが知られている。一方、36成分からなるM12L24型球状錯体の配位結合は非常に強く、錯体の半減期を比較すると10の5乗オーダーも長いことが明らかになった。さらに、錯体に対し、配位結合を作っていない遊離の配位子を混合すると、錯体の半減期が、遊離の配位子が無い場合よりも10の3乗オーダーで短くなった。 この結果から、自己集合の過程では、3つの段階を経るものと考えられる。すなわち、1) 初期段階では、速い平衡状態にある数成分からなる錯体の混合物が一気に生成し、2) 途中段階では、中程度の速さの平衡によって生成物の構造に収束するように構造が組み変わり、3) 自己集合が完結して、一度、最終生成物ができてしまうと48本の配位結合が一分子内で協同的に作用して錯体が極めて安定になることがわかった。このような、段階的自己集合は、例えばタンパク質の3次元構造の形成過程に対して提唱されてきたものであるが、本研究において、配位結合だけからなる単純な人工モデル化合物を用いて、はじめて実験的に明らかにした。 また、このような自己集合性錯体の構築において、有機配位子のわずかな構造の違い、例えば、二座配位子の配位角度のわずかな違いを反映し、得られる生成物が全く異なることがわかってきた。得られる生成物はまざり合うことがなく、この生成機構を研究することで複雑な自己集合機構を明らかにし、引いては、新しい合成法へとつなげられると考えられる。
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Research Products
(4 results)